パリ五輪(オリンピック)スケートボード女子パーク決勝に出場した2人の日本人選手の言葉に、目が覚めた気がした。
前回に続く銀メダルを獲得した開心那は、最後の3回目に離れ技をすべて成功させたが、金メダルには0・55点届かなかった。それでも「出したい技はすべて出せた。悔しいけど、うれしい」と満ち足りた表情を見せた。
自慢の大技を成功させられず、8位に終わった草木ひなのも「ミスしたのは悔しいけど、途中まではかっこいい滑りができた。本当に楽しかった」と、試合後も満面の笑みだった。
後悔も、悔し涙もない五輪。2人の言葉と笑顔が何だかとても新鮮に感じた。勝敗だけの人生なんてつまらないじゃないか。15歳と16歳に、そう諭された気持ちになった。
開幕から日本選手の「支えてくれた方々、応援してくれた方々のために」という言葉のシャワーに少々うんざりしていた。負けた選手が「申し訳ございませんでした」と涙で謝る姿にも強い違和感があった。
五輪は何よりも自分を表現する舞台で、試合は自身との戦いなのだ。国を背負う必要などないし、結果がすべてでもない。開と草木が体現したものこそ、本来の五輪精神なのだと思った。
東京五輪に続いてパークの外の光景にも心が温かくなった。開の得点が発表された瞬間、銅メダルに順位を下げたスカイ・ブラウン(英国)が、笑顔で抱きついて銀メダリストを祝福した。予選落ちした前回金メダルの四十住さくらは、観客席で日の丸を振って2人の日本勢を応援した。そこにあるのはライバルへのリスペクトだった。
初めて採用された前回から、選手の技術と技の難度は格段に上がり、スポーツにより近づいた。3年間で身長が22センチも伸びた開も「ウォールライド」と呼ばれる体を真横にして壁を滑る独創的な新技で、観客の喝采を浴びた。
日本国内の公共パークは、東京五輪が開催された21年の249カ所から475カ所に増え、競技人口も子どもを中心に急増しているという。もっとも五輪に刺激を受けて始めた新世代の目標はメダル。五輪競技になったことで、自由な自己表現を楽しむ価値観が薄れる可能性もある。
4年後はさらに競技レベルが上がり、次世代も台頭してくる。今回の日本勢3人には年齢を重ねてもトップレベルで戦える姿を見せてほしい。そして何より年齢も国境も勝敗も超越したこの素晴らしい“スケボー文化”の伝承者でいてもらいたい。【首藤正徳】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「五輪百景」)






