シンクロの男子禁制が解かれた。男女の選手が初めてペアを組む混合デュエットの安部篤史(32=トゥリトネス)と足立夢実(26=国士舘シンクロク)は、デュエット・フリールーティン(FR)に特別出場。85・6667点で、日本代表の乾友紀子(24)三井梨紗子(21)に次ぐ2番目の得点をマークした。日本男子で初めて大会に出場した安部も練習の成果を出し、世界選手権(7~8月、ロシア・カザニ)へ手ごたえをつかんだ。

 「男が1人」の違和感はなかった。女の競技だったシンクロで、安部は堂々と初演技を披露した。テーマは吸血鬼のドラキュラ。スタミナ面の不安はあったが、演技時間の3分間、何とかドラキュラを演じきる。FRでは2番目の高得点に「大舞台で演技を終えたことにホッとしている」と歴史的1歩を振り返った。

 約230人の参加選手の中でただ1人の男子。会場の医務室を借りて着替えを済ます。髪は女子選手と同様にゼラチンで固める。目力をつけるため、アイラインを引くなど、約30分かけてばっちりメーク。入場するときは、緊張から手と足が一緒に出たが、必死で平常心を取り戻した。

 帝京大1年の夏、映画「ウォーターボーイズ」を見て、シンクロに興味を持った。その後は水中パフォーマンス集団「トゥリトネス」でショーに出演。2月に世界選手権の新種目になった男女混合デュエットの代表に選ばれた。観客だけでなく、ジャッジに向けて演技をしなければならない。水深は1メートルから3メートル。ショーとの違いに戸惑ったときは「これからの男子選手のために頑張る」と自分に言い聞かせた。

 日本代表の井村ヘッドコーチは「練習であんな良い演技は見たことがない」と及第点を出したが、苦言も忘れない。安部に「練習から試合のようにしなさい。試合は練習のごとし」との言葉を送って、レベルアップを求めた。技術、スタミナなど課題はあるが、男子シンクロのパイオニアとして好スタートを切ったことは間違いない。【田口潤】

 ◆男子シンクロ シンクロの最も古いイベントは1892年に英国で開催された。当時は男子のスポーツで「スタントスイミング」と呼ばれた。その後は女子のスポーツになったが、80年代後半から90年代にかけて、欧米を中心に男子にも開放するべきとの声が起きた。昨年11月、国際水泳連盟(FINA)は今夏の世界選手権で男女混合デュエットの導入を決定。国際オリンピック委員会(IOC)は男女平等の観点から男子、女子に限定された種目を嫌う傾向。男子禁制の解除は、五輪種目として存続させるための1つの方策でもある。世界選手権での強豪国は米国とフランス。その下は混戦模様で安部、足立の日本はメダルを狙っている。