男子組手で4連覇と通算6回目の優勝をつかみ損ねた世界王者の荒賀龍太郎(27=荒賀道場)は「勝てば最多(優勝)記録だっただけにショックです」と、うつろな視線で宙を見つめて言葉をしぼり出した。

 決勝は「試合のイメージをしっかりもてないままコートに入ってしまった」という。そこに渡辺大輔(27=日本空手松涛連盟)の先制の突きをカウンターで浴びて、心が乱れた。さらに予想に反して前に出てこない相手の戦法にも戸惑い、試合中に修正することができなかった。

 正式競技に採用された20年東京五輪では、世界大会の5階級から3階級に絞られる。荒賀の84キロ級は84キロ超級と1階級にまとめられる。体重無差別の今大会の準決勝で、今年のワールドゲームズ84キロ超級金メダリストの香川幸允(30=テアトルアカデミー)と対戦した。「(同じ階級になることを)意識して、プランをもって臨めた」。3ー1で勝利を収めたが、そこに意識を集中した分だけ、決勝の心の準備が少しおろそかになった。「いろんなプレッシャーの中でもチャンピオンは勝っていかなければならない」。世界王者の名前の大きさを、荒賀はあらためて感じたようだ。【首藤正徳】