4種目の合計で争う個人総合で、18年世界選手権銀メダルの村上茉愛(24=日体ク)が、圧勝で2年ぶり4度目の優勝を飾った。東京オリンピック(五輪)のために準備した跳馬の大技「チュソビチナ」を試合で初成功させ、決勝は合計57・032点。首位だった予選と合わせて112・097点とし、後続を引き離した。3位には拠点の米国から日本代表での五輪出場を目指して帰国した新星、相馬生(うい、15)が入った。

普段は厳しい瀬尾コーチがそう言ったのか、確認していない。ただ、村上はポジティブにそう思うことにした。

「完璧」

跳馬で挑んだ新技。予選ではマットから足が外れた「チュソビチナ(前転跳び前方伸身宙返り1回半ひねり)」。跳馬に勢いよく手をついて前回りをし、体をひねりきった。わずかに両足が左に動いたが、思わずうなずいた。駆け足でコーチの元へ。「完璧」。そう聞こえた。

東京五輪で勝つために取り組んだ技だった。本来の今夏なら、一段階低い技を使っていた。延期で覚悟を固めた。予選ではミスも「最近失敗が多いのはネガティブに考えないようにした」。出来栄え重視の考えを脱皮し、「それくらい自分が難しい技がたくさんできるようになってきたから」と捉え、決勝へ切り替えた。他3種目でも種目別で優勝した段違い平行棒など、高いレベルで演じきった。

生来のポジティブ思考。それはコロナ禍でも変わらなかった。自粛期間に実家に戻り、体育館での練習は3カ月間できなかったが、折れない。母とダンスを練習し、サッカーボールを買ってリフティング、近所の公園で鉄棒を握った。「うるさくて1回でやめましたが(笑い)」と布団を敷いて回転技もした。毎日料理を作り、楽しみながら再開の時を待った。

五輪の開催は不透明だ。不安もある。ただ、「毎日ちゃんと練習をしていれば、いつか目の前がぱっと明るくなると信じてやるしかない」。演技のように弾む声にも、前向きが詰まっていた。【阿部健吾】