男子の張本智和(20=智和企画)が6年ぶり2度目の優勝を飾った。決勝は2連覇中だった戸上隼輔(明大)に4-3で勝利。マッチポイントを8度握られながらもはね返した。これで約2年に及ぶパリ五輪シングルス代表選考レースが終了し、男子は張本と戸上が上位2人の切符をつかんだ。2月の世界選手権団体戦(釜山)8強で3人の団体枠が確定する。

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熱気あふれる会場が一瞬、静寂に包まれた。得点ごとに雄たけびを上げた張本も、声を発せなかった。床に膝をつき首を振ると、ユニホームで涙を拭った。史上最年少14歳での日本一から、6年がたっていた。戸上と抱き合うと、場内インタビューで言った。

「本当に言葉が出ないです。自分の力ではなく、本当に神様のおかげです」

何かが舞い降りた気がしていた。

驚異的な粘りを詳しく思い出せなくなるほどのシーソーゲームだった。1年前の決勝と同じ顔合わせ。王者戸上に1-3と劣勢に立たされた。1ゲーム返して2-3として迎えた第6ゲーム(G)。3度のマッチポイントを耐え、最後は13-12からフォアハンドで打ち抜いた。最終Gも8-10の剣が峰。2連続得点で追い付いても、三たび先手を取られた。あと1点で敗れる計8度の窮地を脱すると、不思議とそれまでつっていた足が回復。神様に「勝て」と言われた気がした。

「今日は戸上選手にとって魔物がいたかもしれないけれど、僕に味方がついてくれた。正真正銘、互角のライバルと確信しました」

6年前と景色は変わった。21年東京五輪でともに団体銅メダルに輝いた水谷隼が引退。世界ランクは日本男子トップの9位で「エース」と評されたが、全日本の頂点は遠かった。大会前には、同時期にインドで行われる国際大会出場も考えた。だが、心にもやもやとした感覚があった。

「優勝しても(世界ランクは)1ポイントも入らないけれど、日本で1位を決める意味を再確認した。(6年前より)100倍ぐらい価値がある優勝。自分が『日本のエース』と言える気がしています」

五輪代表選考レースでは国内外の大会に臨みながら体重を5キロ落とし、とっさのカウンター、遠くのボールに飛び付く力を養った。来月は五輪団体戦出場を懸け、世界選手権が控える。

「この瞬間から100%、世界に目を向けられる。(戸上と)仲間として、パリに突き進んでいきたい」

歴史的熱戦は、エースをさらに強くした。【松本航】