【オリックス週間④18年前の6月30日】合併に待った ホリエモンが東証で近鉄買収を表明

ウィークデー通しのオリックス特集。第4弾は、平成野球史で最も重大な事案だった球界再編問題を取り上げます。オリックスと近鉄の合併が合意し、1リーグ制へと向かいかけたその時、ホリエモンがメシアのごとく参上します。(2004年7月1日掲載。所属、年齢などは当時)

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寺尾博和

インターネット関連サービスのライブドア(東京・新宿区)の堀江貴文社長(31)が6月30日、東京証券取引所で会見し、オリックスと合併合意している近鉄バファローズの買収に乗り出すことを正式に表明した。同社長は、球団数減で1リーグ制に向かう風潮にある球界に一石を投じる考えがあるとし「セ・パ2リーグ制の維持」を主張。巨人渡辺オーナーと会談したい意向や、球団名も「大阪バファローズ」を基本線とすることなど、球界参画へ強い姿勢を示した。選手サイドからは歓迎の声が上がった。一方、近鉄側は同社への売却を否定、球界首脳からも否定的な見解が多く上がった。

2004年7月9日付5面。堀江氏が会談を望んだ巨人渡辺オーナーの発言が潮目となり、楽天の新規参入で12球団は維持された

2004年7月9日付5面。堀江氏が会談を望んだ巨人渡辺オーナーの発言が潮目となり、楽天の新規参入で12球団は維持された

▷ブレず 黒T&綿パン

黒のTシャツと綿パンのラフな姿で現れた堀江社長は、ときに熱っぽく近鉄球団買収への姿勢を示した。

宮内亮治最高財務責任者(36)を伴った会見で「(球界に)一石を投げようとしている。球団を買いたい人はたくさんいる。経営も十分にできてお金もある、会社の立て直しもできるというのに、断わられる理由が分からない。新規参入の阻害ではないか」と訴えた。

売名行為では、との指摘には「断じてそのようなことはない」と否定。むしろ、オリックスと近鉄の合併合意を機に、1リーグ制に向かう球界の流れに“待った"をかけるかのように意欲的に語った。

◆一問一答

−会見の真意は

堀江社長 球団の経営を長期間にわたってできないほど小さな会社ではない。500億円ほどの現金を保有している。5年、10年で手放さないといけないような弱い会社ではない。オファーすら出させていただけないような状況なので、この場を設けさせてもらった。

−本業とプロ野球のかかわりは

堀江社長 スポーツは重要な情報コンテンツ。プロ野球が衰退していくことは我々にも社会にも良くない。プロスポーツは公共財。それを助けるのは上場企業として当然だと思っている。

当時の価値観からすると、東京証券取引所でこのカジュアルさはスゴい=2004年6月30日

当時の価値観からすると、東京証券取引所でこのカジュアルさはスゴい=2004年6月30日

−近鉄側は断っていると言っている

堀江社長 もともと我々の意思を伝えるために、会見を開こうと準備していた。

−売名行為では

堀江社長 これで売れるなどと全然考えていない。正攻法でプロモーション費を使ってやれる。真剣に買いたいと思っている。合理的に見て、我々の方がオリックスさんよりいいオファーが提示できる自信はある。我々に売った方が近鉄さんは経営的にいいと思っている。

−球界には強い力がありますが

堀江社長 売りたい会社があって、強い権力を握っている方が文句を言わなければ球団を買って、経営を続けていける体力のある会社はある。なぜ、断る理由があるのか。

−今後は

宮内財務担当 近鉄バファローズ様側には企業の合併・買収の代理人の方がいらっしゃいますので、正式な(買収)意向表明書を本日中には提出させていただく予定です。

−監督構想などは

堀江社長 原さん(前巨人監督)なんていいよね(冗談っぽく)。

▷Jリーグとの比較論 なぜ縮小

買収が成功した場合について「2リリーグを維持したいと思っている」とし「このまま1リーグ制になれば、縮小均衡でますます球界は衰退していく。Jリーグがチームを増やしているのに、どうしてプロ野球は減らそうとするのか」と警鐘を鳴らした。

宮内氏によると、ある証券会社から近鉄球団買収の打診を受けたのは2月下旬。堀江社長は「今年に入って利益を上げ、興味をもてるようになった。買いたいと思った時期と、売りたい球団があるというのが合致した」と説明した。

その後、プロ野球選手会に関係する人物と接触、買収額を「10億円から30億円」(宮内氏)に設定し、近鉄側に買収の意向を伝えた。

◆球団売却金 球団の売却金額は正式には明らかにされないが、02年に横浜の株がマルハからTBSへ譲渡された時は約50億円で合意したと言われている。88年にダイエーが南海を買収した際は、南海側が20億〜30億円で球団を売却したい意向を示した。

02年の横浜株譲渡の際は発生しなかった参加料30億円については、コミッショナーに求められれば払う用意があるとした。ただ、直接近鉄側と接触したことはなく「相手にしてもらえなかった」と、回答を得ていないことも明かした。

▷9球団以上の賛成必要

合併合意から球界再編へと、大きな流れの中でのアプローチ。球界首脳の反発は大きいことが予想され、買収には実行委員会とオーナー会議の承認(3/4以上)も必要だが「強い力が存在しているのは分かっている」とし「(巨人)渡辺オーナーを含めて、そのほかのキーマンの方に会えるのなら会って説得したい」と直接会談に意欲をみせた。

渡辺オーナーは東大文学部の先輩にあたるが「それは知らなかった」と苦笑。今後は近鉄へのアプローチとともに、球界関係者にも理解を求める。

堀江社長はまた、チーム名について「大阪という名と、バファローズを変えるつもりはない」と“大阪バファローズ"を基本線にしていることを明言した。「バファローズ」については、近鉄側が合併条件としてオリックス側に求めながら、明確な答えを得ていない“問題点"でもある。

本社業務を大阪市に移転させる計画も明かした。 「我々がお手伝いできることがあれば(バファローズを)日本を代表する球団にしたい」。IT業界をリードしてきた31歳カリスマ社長は、球界参画で革命を起こす覚悟だ。

◆株価急騰、ストップ高近鉄バファローズ買収に名乗りを上げたIT総合企業ライブドアの株価は30日、「買収表明効果」もあって急騰した。終値は前日比100円高の920円となり、東京証券取引所で値幅制限の上限となる「ストップ高」を記録した。準大手証券では「(買収表明を手掛かりに)ネット取引の個人投資家による買い注文が膨らんだ」と分析した。

堀江社長の「イケイケ」の経営方針もあり、同社の株価は最近、高騰を続けていた。昨年6月に1株4万9500円だった株価は、1株22万2000円まで上昇した同12月に100分割。今年6月25日、1株5200円の時に再び10分割した。まだ近鉄買収表明が報じられていない25日からは3日連続ストップ高をつけていた。もし昨年6月時点で同社株を購入し保有し続けていれば、単純計算で今年6月25日の分割時点で株価は約10倍に達していたことになる。

一方、近鉄バファローズの親会社近畿日本鉄道の株価は前日比1円高で、影響は薄かった。オリックス・ブルーウェーブの親会社オリックスは4営業日ぶりに値下がりした。