【阪神週間④村上ファンドの介入】阪神電鉄株の大量購入が判明…2日後、甲子園で宙に舞った岡田彰布

野球と経済。切り離せない関係がつまびらかになった平成中期でした。「物言う株主」村上世彰氏が、球界にグッと近づいた瞬間を切り出します。動じないでゴールを切った岡田監督の胆力。(2005年9月28日掲載。所属、年齢など当時)

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日刊スポーツ

村上ファンドに抗議のプラカードを掲げるファン。同ファンドは05年10月3日までに阪神電鉄株を38.13%まで買い進め、株主総会での拒否権を保有した

村上ファンドに抗議のプラカードを掲げるファン。同ファンドは05年10月3日までに阪神電鉄株を38.13%まで買い進め、株主総会での拒否権を保有した

優勝が秒読みの阪神タイガースに、衝撃が走った。「もの言う株主」で知られる村上世彰氏率いる「村上ファンド」が、タイガースの親会社である阪神電鉄の筆頭株主となったことが27日、明らかになった。ファンドはあくまで「投資目的」で、球団運営には直接関与しない考え示しているが、電鉄の完全子会社である球団に何らかの影響が出る可能性は残る。IT関連企業のライブドア(堀江貴文社長)の近鉄買収騒動に続く虎の激震。中日が勝ちマジック3で最短Vは29日となる中、ファンドとの攻防も始まった。

◆村上ファンド通商産業省(現経済産業省)のキャリア官僚だった村上世彰氏が設立した投資ファンドの通称。資産価値や収益力に対して株価が安い企業の株式を大量に買い入れ、経営陣に業界再編や株主還元の強化を迫った。

◆村上世彰(むらかみ・よしあき)1959年(昭34)8月11日、大阪市生まれ。小学生時代、貿易商の父親から渡された100万円で株式投資を開始。灘高から東大法学部卒。83年通産省(現経済産業省)入省、M&A(企業合併・買収)法整備などを担当。99年退官し、運用資金約40億円で村上ファンド設立。06年6月、ニッポン放送株のインサイダー取引事件で、証券取引法(現金融商品取引法)違反の罪で逮捕。執行猶予つきの有罪判決を受けた。学生時代に知り合った夫人との間に2男2女がいる。

▷「狙いが分からない」

株主取得は、タイガースのセ・リーグ優勝を目前にして株価が急騰する中、絶妙のタイミングで仕掛けられた。

大阪市福島区の電鉄本社は慌ただしいムードが流れた。手塚昌利オーナー(74=電鉄本社会長)らが事実確認を急ぐとともに、本社役員らが緊急会議を持った。通常の帰社より1時間も遅い午後7時前、多数の報道陣の前に姿を現した手塚オーナーは「この件は広報が対応します」と口をつぐんだが「狙いが分からない」と本音も漏らした。

▷超優良子会社

村上ファンド側の出方は不明だが、何しろタイガースという超優良子会社もある阪神。電鉄株の約1/3を取得されたことは、経営側としては顔色をなくす出来事ではある。

オーナーに代わって応対した黒木敏郎広報部長(44)は「あくまで阪神電鉄の企業価値を高める純投資であって、乗っ取りとかそういう目的ではないと認識しています。第3者に売却するとか、買い戻しするとかも想定していません」と説明した。ただし企業防衛については「テクニカルなことは行っていなかった」と明かした。

騒動から2日後、岡田阪神は見事にリーグ優勝を決めた=2005年9月29日

騒動から2日後、岡田阪神は見事にリーグ優勝を決めた=2005年9月29日

気になるのはタイガースへの影響だ。関西出身で阪神ファンとされる村上氏はこの日、ホームページで阪神球団への関与はしない姿勢を示した。

しかし、その影響力は監督人事、選手雇用問題などにも及ぶ可能性は否定できない。この件について黒木部長は「ご意見は提案されるかも知れませんが、従来の経営陣でやっていくのが基本と考えております」と影響の少なさを強調した。

▷岡田監督「日曜日に聞いてた」

当然、現場は困惑を隠せない。優勝秒読みの時期だけに、岡田監督はこの日、甲子園球場で「そういう話があるらしいことは、球団からは日曜日(25日)に聞いていた。今日の新聞に載るかもとも思ってたけど、詳しいことは何も分からん」とコメント。複雑な表情を浮かべるしかなかった。

とにかく、想定外の事態で優勝に水を差すわけにはいかない。フロントは沈静化に躍起だ。阪神球団の牧田俊洋社長(55)は「今のところ、我々には関係のない話と思っています。優勝にまっしぐらに突進して欲しい」と力説。さらに「こういうことが起こっても、目的は変わらない。ファンに喜んでもらえるよう、いつものように試合に勝ってもらうだけです」と話していた。