「食後に運動してはだめですよ」は非科学的です。

私たちはコロナとどう付き合っていけばいいのか。体重計とにらめっこです。

特集記事

鎌田實


 テレビ、ラジオでもおなじみの医師で作家の鎌田實氏が、長引く新型コロナウイルスの感染症との付き合いで、私たちにできること、いかに困難と向き合っていくかをお伝えしていきます。

★「食後のオススメ運動★

 食後に血糖値が上がりやすくなります。それを防ぐには、運動が良いのです。

 子どもの頃、よく親から「食後すぐに運動してはいけない」と言われましたが、非科学的だということがわかってきました。

 食後15分後ぐらいから血糖値が上がり始めます。この時期に軽い運動をしておくと、血糖値の上昇を緩やかにすることができます。取り込んだ栄養分をエネルギーとして使うので、血糖値の急激な上昇を防ぎます。急激な上昇を防ぐと、急激な低下も起きなくなるため、食後の居眠りや頭の回転が悪くなることを防いでくれます。

 おすすめは、ドローイン歩行。お昼を外で食べて、会社に戻る距離があまりにも短い場合は、少し回り道をしながら、ドローイン歩行をしましょう。

 おなかをへこませながら息を大きく吸って、おなかをへこませたまま息を吐きます。初めは訓練が必要です。慣れてきたら、おなかをへこませたまま、鼻で吸って鼻で吐くことを意識しましょう。頭の後ろに手を当てて歩くと、さらに効果が高まります。腹筋や側腹筋を引き上げることを意識して行うと、内臓脂肪が減ってメタボの解消につながります。

 長引く自粛生活で、コロナ肥満が目立ってきました。ぼく自身はこの1年、体重72キロを完全にキープしています。食後のドローイン歩行のおかげです。

 リモートワーク中の方は、食後に自宅でスクワットやかかと落としなどをするのも、いい考えだと思います。

ドローイン歩行も効果的です。鎌田先生実演。

ドローイン歩行も効果的です。鎌田先生実演。

★抗重力筋に注目★

 コロナとの闘いが長期戦になってきて、フレイル(虚弱)とコロナ鬱(うつ)が目立ち始めています。

 地球の重力に対抗して、姿勢を保つために働く筋肉を抗重力筋といいます。抗重力筋が衰えると、立ったり座ったりといった日常の正しい姿勢を保つことが難しくなります。

 腹筋や背筋、首の力や足の力を弱らせないようにしましょう。背筋をピンと伸ばして姿勢を正し、おなかをへこませて歩くと、抗重力筋が強化されていきます。幸せホルモンといわれているセロトニンも、抗重力筋と関係しています。

 ドローイン歩行も効果的です。ドローインとは「引き込む」という意味です。ウオーキングよりも負荷が高く、体の奥にある体幹を鍛えることができます。メタボを改善し、無理のないシェイプアップにおすすめです。

【ドローイン歩行】

(1)両手を上げて、手のひらを頭上で真っすぐに合わせる(街中では手を上げなくていい)。

(2)鼻から息を大きく吸い込み、おなかをへこませる。

(3)おなかをへこませたまま、口から息を吐き出す。

(4)おなかはへこませた状態のまま、側腹筋に意識を向けて5分歩く。

 このドローイン歩行は、メタボ対策だけでなく、セロトニンが分泌されるため、コロナ鬱の対策にも効果的です。

★巣ごもり老化を防ぐ★

 コロナが猛威を振るっています。外出を控えた自粛生活を厳しくしすぎると、巣ごもり老化が起きてしまいます。働き盛りの中年の人も要注意です。

 内科外来をしていて、目立ったことが起きています。これまでコントロールできていた血圧や血糖値が上昇したり、足腰の筋力が低下している人が増えてきました。

 体の不健康化だけではなく、気持ちがふさぎこんだりする心の不健康化「コロナ鬱(うつ)」も多くなってきました。

★認知機能の低下に注意★

 簡単な計算がうまくできなくなったり、若い人でもヒラメキが少なくなったり、仕事の段取りが悪くなったりしています。認知機能が低下している人が少なくありません。

 こういう人は注意しましょう。

 「最近、気分が落ち込みやすくなった」「人の名前がなかなか出てこない」「イライラして怒りっぽい」「無感動や無反応になっている」

 自粛過剰の生活が影響していると思います。巣ごもり老化を防ぐためには…

(1)運動する

(2)ネガティブなことを言わない

(3)新しいことにチャレンジする

(4)意識的に笑顔を作る

(5)人の助けになることをする

 コロナとの闘いは長期戦です。毎日の生活の中で、上に挙げた5つの行動変容を起こしてみましょう。(2021年夏に日刊スポーツ紙上で連載)

★鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭和23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大卒業後、諏訪中央病院で地域医療に携わり、88年、院長。長野県を健康寿命日本一に導く。05年、名誉院長。ベストセラーになった「がんばらない」など著書多数。最新刊に「認知症にならない29の習慣」。文化放送「鎌田實×村上信夫 日曜はがんばらない」パーソナリティー。日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)理事長、日本・イラク・メディカルネット(JIM―NET)代表としてチェルノブイリ、イラクへの医療支援を続ける。