89歳仲代達矢 驚きの行動力と演劇愛「この若者に負けてはたまるか」

【番記者裏話】スクープや芸能界の最新情報を求めて現場を駆け回る芸能記者が、取材を通じて感じた思いをつづります。

12月に90歳の誕生日を迎える仲代達矢。現役を続ける食事、運動、そして負けん気に触れました。

番記者裏話

小林千穂

紙面企画

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仲代達矢が今秋、石川・能登演劇堂で、役者生活70周年を締めくくる舞台「いのちぼうにふろう物語」に出演するという記者会見を取材した。89歳の仲代の行動力をあらためて感じた会見だった。

能登演劇堂の特徴の1つは、ステージ後方の扉が全開になり、山々の景色が見え、フィールドとの一体感を味わえるところにある。「いのち-」でもこの扉が全開になる場面が最終盤にあるのだが、会見ではどんなふうに扉が開くのかを見せてくれた。

また、仲代はじめ登場人物たちが集う一膳めし屋のセットもしつらえられ、舞台上の盆が周り、建物の表と裏を見せてくれる趣向もあった。

1時間あまりの会見は見どころが多かった。関係者に聞いたところによると、このセットの建て込みのためだけに、会見とは別に、仲代は東京から能登へと足を運んだのだという。当日早めにとか、前日劇場入りというのではないところに、仲代のまじめさと責任感、行動力を感じた。

舞台「いのちぼうにふろう物語」の会見を行った仲代達矢(左)と小宮久美子。後方写真は脚本を手掛けた宮崎恭子さん(撮影・小林千穂)

舞台「いのちぼうにふろう物語」の会見を行った仲代達矢(左)と小宮久美子。後方写真は脚本を手掛けた宮崎恭子さん(撮影・小林千穂)

この会見には、地元で演劇を学ぶ高校生たちや一般参加者も大勢見学に来ていた。会見後、仲代は「ちょっと舞台裏をのぞかせちゃったかな」と苦笑いしていたが、見学者を入れての会見は「やって良かったです。演劇に関心を持ってもらうきっかけになればいいかな」と話していた。舞台機構を見せるコーナーでは、感嘆の声が上がったりしていた。

9~10月に「いのち-」の公演を行うと、12月には仲代の90歳の誕生日がやってくる。今も1時間のストレッチを欠かさず、好きな野菜を中心に、バランスを考えて肉や魚も摂るという食事を心掛けているという。近所の砧公園でウオーキングも行うという。「1周歩きます。昔は5周歩いていましたが、1周で勘弁していただいて」と笑った。設定されているコースは1・7キロもあるのだが…。すごいと言うしかない。

主宰する無名塾には、今年8人の新人が入った。「教えるという立場ですが、まだ現役でもある。指導しながらも、この若者に負けてはたまるかというものもどこかにあるんです」と話した。この気持ちこそが、仲代が現役を続けている最も大きな理由なのではと思った。