携帯メール小説、10万字書いた高校生に賞
第1回野性時代青春文学大賞(角川書店、フジテレビ主催)が、都内の高校2年生木堂椎(こどう・しい)さん(17)の「りはめより100倍恐ろしい」に決まり、11日発表された。木堂さんはこの作品を携帯電話の端末で執筆、メールで「野性時代」編集部に応募した。約10万字を携帯電話の10キーで書いたことになる。編集部では「全文を携帯で書いた世界初の小説」と銘打っている。
17歳の男子高校生が「ケータイ」で書いた作品が、文学賞を受賞した。賞金100万円を獲得した受賞作「りはめより100倍恐ろしい」は、高校生の人間模様を描いた学園青春小説。ユニークなタイトルは、主人公にとって同級生からの「いじめ」より、「いじり」と呼ばれる陰湿な攻撃の方が恐ろしいということを、それぞれの最後の1文字を使って表現している。
「野性時代」編集部によると「木堂椎」はペンネームで、プロフィルや顔写真は公表しない。作品は約10万字あり、400字詰めの原稿用紙で250枚分。携帯電話の端末の10キーを使って執筆し、メールで編集部に応募したという。
戸板女子短大講師で、1200台の携帯電話を持つ携帯電話研究家の木暮祐一氏(38)は「今の高校生以下の世代は、パソコンのキーボードより携帯の10キーが日常的な文字入力の道具になっている」と指摘する。木堂さんの執筆方法やメール送信方法は不明だが、携帯内にファイルとして蓄積した文章を携帯メールで分割送信したり、文章を携帯からパソコンに転送し、パソコン内で編集することも可能だ。
木暮氏によると、04年ごろから携帯の画面の解像度が飛躍的に高まり、細かい文字を大量に表示できるようになった。携帯からも更新できるブログが普及したことも、長い文章を携帯で入力する風潮を広めているという。
携帯で読む小説としては、Yoshi氏の「Deep Love〜アユの物語」が大ヒットし、単行本でも230万部を突破した。ネット掲示板「2ちゃんねる」に書き込まれた実話を基にした「電車男」も映画、ドラマ化され話題を呼んだ。携帯は若者にとって欠かせないツール。これからは携帯端末を使った“親指小説”が増えるかもしれない。
[2006/2/12/07:40 紙面から]
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