北京五輪フィギュアスケート女子で昨年末のドーピング検査により陽性反応が出たROC(ロシア・オリンピック委員会)カミラ・ワリエワ(15)が、15日のショートプログラム(SP)で始まる個人戦に出場できることになった。

14日、スポーツ仲裁裁判所(CAS)が裁定を下した。16歳未満で「要保護」の対象であることが考慮された。国際オリンピック委員会(IOC)はワリエワが3位以内に入った場合はメダル授与式を実施しないと発表し、前代未聞の混乱が続く。

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現地時間午後1時58分、首都体育館の練習用リンクに集った各国メディアがざわついた。CASからワリエワが個人戦に出場できることが発表された。練習を終え、無言で去った金メダル最有力候補は守られた。

決め手は「15歳」という年齢だった。昨年12月25日に採取された検体から、持久力向上の効果があるとされる禁止薬物トリメタジジンが検出されたのが、団体戦金メダル翌日の今月8日。即時の暫定資格停止処分を受けたが、ロシア反ドーピング機関に異議を申し立て解除された。それを不服としたIOCなどがCASに提訴したが、この日、CASのリーブ事務局長は「16歳未満であり、規定の下では要保護の人物。昨年12月に行われた検査でアスリートを出場禁止にするということは、この選手に対して、害をもたらすと判断した」と出場停止を避けた。

この決定により、競技の運営そのものが前代未聞の混乱に陥った。IOCはワリエワが3位以内に入った場合にメダル授与式を実施しないと発表。13日の公聴会に参加した国際スケート連盟も、ワリエワがSPでフリー進出圏の24位以内に入った時には「公平性の観点」で25位の選手もフリーに進ませる意向を表明した。仮に今後の調査で「失格」等の結論が出た際に、SP25位の選手の権利を守るためといえる。

米国オリンピック・パラリンピック委員会も、WADAも「失望している」と声明を出すなど、余波は大きい。渦中のワリエワは午後2時半から40分間の調整で4回転からの3連続ジャンプなどを決め、同8時55分から本番リンクで行われた2度目の練習にも姿を見せた。皮肉にも競技以外の面で全世界から注目を集め、金メダルを目指す個人戦が幕を開ける。【松本航】