来月4日開幕の北京五輪に向けて27日、選手団や関係者の現地入りが本格化した。日本選手団はアイスホッケー女子が一番乗りで、米国で調整していたスノーボード女子の鬼塚雅らも到着した。今大会でも昨夏の東京五輪同様、新型コロナウイルス感染対策で選手ら大会関係者は「バブル」の中に隔離される。この日、北京入りした日刊スポーツ記者が、28日で開幕まで1週間となる現地の様子を伝える。

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一瞬ドキッとした。あたりが暗くなった北京時間午後6時半。空港到着から約4時間が経過し、宿泊先のホテルがバスの窓から見えて喜んだのもつかの間…。バスはホテル正面と思われる場所を通り過ぎ、十数分かけて周辺を1周…。再び正面へと戻ってきたが、様子がおかしい。それもそのはず。ホテルは壁で覆われ、まるで工事現場のようだった。運転手は入り口が分からず、一方通行の道で数十メートルのバック。後ろから追突されないか、心の底から心配したが、警察官の誘導により事なきを得た。

それほどバブルは徹底されている。20年2月、フィギュアスケートの4大陸選手権(ソウル)以来となる海外出張。機内では中国当局の指示で検温が行われた以外、それほどコロナ前と変わった様子はなかった。緊張感が漂ったのは、北京首都国際空港到着後。飛行機から1歩出ると、全身を白の防護服で覆った職員たちに無言で出迎えられた。

“洗礼”を受けたのは到着後のPCR検査だった。今大会の取材で義務付けられた、少し息苦しい医療用マスクを外し、向き合った防護服のスタッフ。日本を出国する72時間前から鼻に綿棒のようなものを入れるPCR検査を2度受け、少しは慣れたはずだった。だが、今回は先に口。リズムが狂ったのか鼻へ移ると膝に置いた拳に力が入った。心なしか日本で受けた際より奥に、ぐいっと突っ込まれた気がした。「リラ~ックス」と言ってくれたが、検査が終わると涙が出ていた。

荷物の受け取りはおなじみのベルトコンベヤーではなく、ホテルへ向かうシャトルバス乗り場に並べられていた。空港内は職員以外の一般人を1人も目にせず、動線が徹底されていた。空港到着から約2時間半後に出発した大会関係者用のバスはスイスイと市街地へ。21日から五輪専用レーンが設けられ、渋滞を横目に、快適な移動だった。今後は報道陣も毎日の検査が義務付けられている。楽しみであり、気を抜けない日々が始まった。【松本航】