金のけん玉効果よ、北京に届け! 日本けん玉協会の製造指定工場に認定されている「山形工房」(本社・山形県長井市)の梅津雄治社長(36)が8日、北京五輪男子フィギュアスケートでショートプログラムでまさかの8位発進となった羽生結弦(27=ANA)の3連覇を願い、エールを送った。羽生は幼少期からけん玉が得意で、平昌五輪後の19年1月には、日本けん玉協会が同社製造の金色けん玉「大空プレミアムゴールド」を名前入りで寄贈した縁がある。

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梅津社長は羽生の大逆転Vを願かけし、高難度技に挑戦。羽生が日常に愛用している黒けん玉を手にとったが「いや、違う。やっぱり金だ。大きいやつ」と大きな金のけん玉を選んだ。玉部分をつかんで持ち手部分の剣先を穴に入れる「飛行機」「灯台」など、けん玉界では、フリーで羽生が挑むクワッドアクセル(4回転半)のような大技を次々と成功。ひと足速く“着地”させた。

羽生だけでなく男子モーグル銅の堀島行真も、けん玉愛好家。エンゼルス大谷翔平も日本で活躍時から、打撃における全身の連動性や集中力アップを目的としてトレーニングに取り入れている。広島菊池涼介などのプロ野球だけでなく、各競技のトップアスリートも注目のアイテムだ。「体幹や動体視力の強化になるとも言われています。リラックスや息抜きを含めて、生かされているのはうれしい」。同じ東北人としても「風雪厳しい生活の中で築かれた粘り強さは誉れです」。金メダル獲得を諦めない心の強さも確信している。

現在は世界46カ国にけん玉が輸出され、欧米だけでなく、近年は中国や台湾など、アジアにも広まっている。毎年、世界大会も開催されており「日本だけではなく世界で競い合う。オリンピック競技になることは、けん玉業界全体の夢です」。羽生の活躍は、けん玉普及のアクセルにもなりそうだ。【鎌田直秀】

◆けん玉 十字状の「剣」と穴の空いた「玉」で構成。1975年(昭50)創設の日本けん玉協会によると、けん玉が日本の文献に登場したのは1777年(安永6)。国内唯一の開港地であった長崎から広まったと考えられている。遊びだけでなく、占いにも用いられた。起源は諸説あるが、16世紀のフランスで貴族や上流家庭が象牙などを使ったけん玉で遊んだ資料もある。現在の形は1918年(大7)に広島県で生まれ、当時は「日月ボール」と呼ばれた。近年は競技用けん玉の規定も確立され、同協会による各種大会や技術指導、級位や段位の認定もある。紅白歌合戦では歌手三山ひろしらが126人連続成功のギネス記録を更新。競技に加え、老化防止など健康面でも注目されている。