北京冬季オリンピック(五輪)のスノーボード女子スロープスタイルで銀メダルを獲得して今大会の米国第1号メダリストとなったジュリア・マリノ(24)が、国際オリンピック委員会(IOC)からビックエアーの前夜に自身のスポンサーである高級ファッションブランド「プラダ」のスノーボードの使用を認めないと通告され、棄権したと告白して波紋を広げている。

プラダのボードで出場して2位になった6日のスロープスタイルに続いて14日から始まるビッグエアへの出場を予定していたマリノは15日、「スロープでは問題がなかったにも関わらず、IOCからビックエアーではボードを承認できないと言われた。ロゴを隠さないと失格になると告げられ、ボードの裏のロゴをペンで塗りつぶすよう言われた」とインスタグラムのストーリーに投稿した。

マリノがNBCに語ったところによると、プラダのロゴは「ルール40」と呼ばれる五輪期間中のマーケティングに関する規則に反するとIOCから説明があり、スロープスタイルではヘルメットの「プラダ」のロゴを隠すよう求められてテープを貼って従ったというが、ボードのロゴについては言及はなかったため、ビッグエア-でもヘルメットのロゴのみ隠して同じボードでの出場するつもりだったという。

IOCの指示通りロゴを塗りつぶしたボードで滑ってみたというが、「ジャンプで十分なスピードが出なく、何度か失敗した。不安定で心理的にも不安に感じた」とマリノ。数日前の練習で転倒して尾骨を負傷していたこともあり、さらなる負傷のリスクを避けるため棄権することを決めたと明かした。

しかし、フィギュアスケート女子ではROC代表のカミラ・ワリエワがドーピング検査で陽性反応が出たにも関わらず15歳という年齢を考慮して引き続き五輪に出場することが認められていただけに、ドーピング違反よりスポンサーシップ違反の方が厳格な処分になるのはなぜかと批判が噴出している。

【写真】メダリストの集合写真にも「プラダ」のボードが写り込んでいた

「規則は規則」ならドーピングもルール40違反も同様であるべきとの声がある一方、IOCにとって最も重要なのはスポンサーであり、マリノはメダル獲得で注目を浴びたことでそのIOCの逆鱗に触れたといった声もある。また、ネットでは「大手スノーボードブランドとプラダに何の違いがあるのか。知る限り、IOCの公式スノーボード企業パートナーはいない」と言った書き込みや当初は認めていたルールがメダル獲得後に変更されたことは「場当たり的だ」と、ルール40そのものに対する批判も出ている。米オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)も書簡で他の選手がバートンやロキシーで競技に参加するのと同じく、マリノはプラダのボードで競う権利があるとIOCに抗議していたという。

マリノ効果で、メダル獲得からわずか数時間で3600ドルのプラダのボードは完売したと伝えられている。プラダからはコメントは出されていない。(ロサンゼルス=千歳香奈子)