日本が決勝でカナダに屈し、連覇を逃した。エースの高木美帆(27=日体大職)、高木菜那(29=日本電産サンキョー)、佐藤綾乃(25=ANA)のメンバーで臨み、一糸乱れぬ美しい隊列で突き進んだが、最終周の最終コーナーで高木菜那が転倒し敗れた。カナダは2分53秒44の五輪新で、日本の記録は3分4秒47だった。

高木美帆は1500メートル、500メートルの銀に続く今大会3つ目の銀メダル獲得。通算メダル獲得数は6となった。これで五輪での日本女子最多だった柔道の谷亮子、シンクロナイズドスイミングの立花美哉、武田美保を上回った。

パシュートはチーム一体となって滑り、リンク6周(2400メートル)のタイムを競う。先頭の1人が風よけとなり、後ろの2人の空気抵抗を軽減する。負担を分け合うため、1周ごとに先頭を入れ替わるのが従来の戦い方だった。だが先頭交代によるタイムロスが出るデメリットもある。そこへ先頭交代をせず、後ろの選手が前の選手の背中を押し続ける「プッシュ作戦」が登場し、それを取り入れた各国が軒並みタイムを上げていることに、日本を指導するヨハン・デビット・ヘッドコーチが着目した。

ただ実際に取り入れると、前の選手との距離が近くなりすて足が接触し、転倒する危険があった。そこで日本は前の選手の背中に手を添えた「疑似プッシュ作戦」へと進化させた上で、先頭交代を少なくする形で後方からのプッシュもするハイブリッド方式を導入した。

12日の1回戦では、中国を相手に新戦術が威力を発揮。まず高木美が1周と4分の3、佐藤が1周、高木菜が1周と2分の1で、最後に再び高木美が1周と4分の3で先頭を務めて6周を回り切った。出たタイムが2分53秒61の五輪新だった。

その勢いのまま、この日の準決勝でもROC(ロシア・オリンピック委員会)を相手に2分58秒93をマークし、6秒99の大差をつけて決勝進出。そして迎えた最終レースでは、ワールドカップ(W杯)で3連勝している好調カナダを相手に再び五輪新記録の更新も期待されていた。完成された組織力は今大会随一だったが、最後に思わぬアクシデントに見舞われた。