「オールラウンダー」高木美帆(27=日体大職)が1分13秒19の五輪新記録を樹立し、個人種目で初の金メダルに輝いた。冬季五輪で日本勢最多となる1大会4個目のメダル獲得となった。98年長野五輪ジャンプの船木和喜の3個を超えた。

1000メートルで今季最速の1分11秒83を持つ高木美は、13組に登場した。スタートから果敢に飛び出した。力強い滑りで最後の直線も猛スパート。1分13秒19の五輪新記録をマークし、悲願だった個人種目での金メダルを手にした。この種目では前回平昌五輪は銅メダルだった。最終組の優勝候補ボウのレースを見終え、金メダルを確認すると歓喜の涙を流した。そして日の丸を手にリンクでウイニングランを披露した。

表彰式を終えた高木は、金メダルを手に笑顔。「このオリンピックの出だしはつらいことが多かったが、最後にこうやって自分のすべてを出し切ることができた。このレースでもし金メダルが取れなくても悔いのないレースができたことがうれしくて。こうやって金メダルが取れたことでうれしさが倍増というか、形として残ったなと思っています」と喜びをかみしめた。

5種目にエントリーし、7レース目。体はもう限界だったという。「疲労感というより咳が出る。内臓というか、体の中の方がギリギリのところがあったので。無事に走り切れて良かった」と言うと、ゴホッ、ゴホッと咳が出た。

金メダルが期待された15日の団体追い抜きは、姉の高木菜那がラスト60メートルで転倒するアクシデントで惜しくも連覇を逃した。涙の敗戦に日本中が健闘をたたえた。SNSに励ましのコメントがあふれた。

そんな声が励みとなり「スタートの1歩目でひるまず出ることができた。最後の1000メートルが終わって、最後にみなさんにありがとうと言えます」と感激した面持ち。悔し涙の後に、うれし涙というハッピーエンドが待っていた。

◆冬季五輪日本女子5種目出場メモ 過去にスピードスケートで2人が達成。橋本聖子(現東京五輪パラリンピック組織委員会会長)が88年カルガリー五輪、92年アルベールビル五輪と、2大会連続で500、1000、1500、3000、5000メートルの5種目に出場。カルガリー五輪では全5種目で日本新をマーク。アルベールビル五輪の1500メートルでは銅メダルを獲得した。06年トリノ五輪では、田畑真紀が、500メートルを除いた個人4種目と団体追い抜きに出場。最高は団体追い抜きの4位だった。