北京五輪フィギュアスケート団体戦で銅メダルに貢献した小松原美里(29)、尊(30)組(倉敷FSC)が12日、アイスダンスのリズムダンス(RD)に臨む。16年に競技のカップルを結成し、17年1月に結婚。米国出身の尊(ティム・コレト)が20年11月に日本国籍を取得し、五輪への道が開けた。2人の歩みをひもといた。【取材・構成=松本航、阿部健吾、木下淳】

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◆出会い 16年春、美里が拠点としていたミラノに、尊の当時のチームが立ち寄る。だが、尊はまさかのロストバゲージ。2日間滑れず、夢を語り合う。「あ~、性格が合うなぁ」(美里)。「すぐに美里がいい人だと思いました。でも愛するのは、もうちょっと時間がかかりました」(尊)

◆カップル結成 身長161センチの美里は「でっか!」が第一印象。「膝が柔らかくて一緒に滑って伸びが出る。『合うなぁ』と」。187センチの尊は「手を握って『とても良い』と思った。(トライアウトの経験が豊富で)違いが分かりやすい」。「私はいまいちよく分からない」(美里)

◆結婚 プロポーズは大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン。ハリーポッターエリアで「バタービール」を飲んで乾杯。17年1月23日に婚姻届を出し「どっちからというより一緒に『いいかもね』。五輪に行きたい目標もあって『その可能性もあるなら若いうちにしよっか』となった」(美里)

◆夫婦関係 競技も私生活も真剣。けんかは英語と日本がミックス。「育った文化、環境が異なり、自分の当たり前が相手は違う。気を付けて話さないと間違って伝わる。終わった後は互いに『言いすぎちゃった』とへこんだり…」(美里)。「けんかしている時は俺がめっちゃ言う」(尊)

◆転向 美里は16歳までシングルで「足を痛めた時に隣で(村上)佳菜子ちゃんが連続3回転を跳んでいて、やめよう…と思った」。尊もシングル選手だった19~20歳で足首の故障に見舞われ「アイスダンスを3週間練習して、楽しかった。フィギュアの中で、好きな部分が全部入っている」

◆覚悟 20年11月に尊が日本国籍を取得。名前は美里の母が考案。日本武尊の「尊」と尊敬の「尊」が由来で「いいアイデアですぐに『はい』」(尊)。「(国籍変更は)私がイタリアで(当時の)パートナーにしてあげられなかったこと。今でもずっとありがたいなと思っている」(美里)

◆親戚 美里の兄鉄平さんの妻は、女子野球で「ナックル姫」と親しまれる吉田えり(30)。19年に脳振とうで約3カ月滑れず「えりちゃんからイップスの話を聞いて『焦らないで』と言ってもらった。私もフィギュアの前は少年野球。お兄ちゃんに教えてもらう時間が好きだった」(美里)

◆魅力 全日本選手権4連覇と実績を積んだ。自慢の魅力は「大きなリフトは見ていてわかりやすい。(フリーダンスの)SAYURIは(歌舞伎役者)片岡孝太郎さんに教えていただき、意味がたくさん込められている」(美里)。「スピード感が最後まである。ぜひ見てください」(尊)

4日、フィギュアスケート団体のアイスダンスRDで演技する小松原美里(左)、小松原尊組
4日、フィギュアスケート団体のアイスダンスRDで演技する小松原美里(左)、小松原尊組