【ミラノ5日=木下淳】フィギュアスケート男子の26年ミラノ・コルティナ五輪(オリンピック)スペイン代表で、開幕10日前にショートプログラム(SP)曲が著作権問題で使用できなくなったと明かしていたトマスリョレンク・グアリノサバテ(26)が、当地で行われた公式練習に初登場した。

前日まで参加していなかったが、この日は日本の鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大)佐藤駿(エームサービス/明治大)と同組で本番会場のリンクへ。注目された曲かけ練習は、騒動になっていた米アニメ映画「ミニオンズ」(ユニバーサル・ピクチャーズ)のテーマ曲だった。

冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)こそ転倒していたものの、やはりシーズンを通して滑ってきたプログラムは心地よさそう。約2分50秒を滑り抜いた後、取材に応じ、事の真相を打ち明けた。

「(五輪用に)ライセンスを購入し、手続きが完了した後、ユニバーサルから詳細情報の追加要求メールが届いたんです。衣装は? プログラム内容は? 全て明示せよ、と。その全てを送ると、すぐ返答がありました。却下します、と」

騒動を巡っては2日、本人がインスタグラムのストーリーズに状況を投稿。国際スケート連盟(ISU)から「SP曲が使用できなくなった」と非情通告されたことを記していた。

グアリノサバテは昨年8月、五輪シーズンのSP曲を決め「ISU Clickn Clear」というシステムを通じて必要な手続きを済ませた。フィギュアスケートなど演技に音楽を用いるスポーツに向けて、ライセンス取得済み楽曲を提供するシステム。ここに申請した曲でシーズンを通して舞い、問題になっていなかったが、本人はまず新たな事実を明かした。

「申請の手続きは長く時間がかかります。8月にSPのプログラムを制作した際、連盟とコーチから『演技に使用する音楽の権利をクリアする必要がある』と伝えられました。そこで、推奨サイトのClickn Clearを利用し、全ての手続きを進めたのですが、進捗(しんちょく)が非常に遅くて…。結局、明確な回答を得られませんでした」

実際は、その状態で演技していたといい「ユニバーサルや(一部の曲を手掛ける)ファレル・ウィリアムズへの連絡が難航し、最後の曲のアーティスト名にも誤りがあったため、連絡が取れなかったんです。そのまま競技を続けてきたんですが、五輪に向けて、さらにClickn Clear経由の特別な申請が必要と。そこでSPとフリーの両プログラムを再提出しました」という流れだったという。

フリーは、すぐ承認された。さらに数日後、ライセンスを購入し、問題なく完了したと思っていた数日後だった。

「ユニバーサルから追加要求のメールが。最初の音楽、つまり映画の冒頭に流れるテーマ曲のようなものですが、まず却下されました。衣装も同様。ロゴがなくてもミニオンと分かるから承認が必要でした。そういうわけで、金曜日(1月27日)にコーチから『SPは実現不可能だと思う。解決策を見つけないと』と。ユニバーサルから、もし『100万ドル(約1億5500万円)の罰金を払え』と言われたりしたら、払えませんからね」

やむなく、昨季のビー・ジーズに戻して乗り切ることにした。今季はフリーもビー・ジーズのため同じになってしまうが、背に腹は代えられなかった。

この段階で、SNSに投稿した。「すごく多くの人から『オリンピックで君がこのプログラムを滑るのを見る日が待ち切れない!』って言われてたから。みんなに伝えたかったんだ。そうしたら…信じられないことが起きたんだ。みんながシェアしたり、リポストしたり、私にたくさんの応援や愛を送ってくれた。目が覚めたらインスタグラムのアカウントに何通ものメッセージが届いていて、アメリカや日本でも記事がシェアされていた。そして火曜日(3日)の夜、Clickn Clearから『ユニバーサルが考えを変えた』って連絡があって『最初の2曲の権利は君にある』って言われたんだ。あと、ファレル・ウィリアムズと最後のアーティストとは交渉中。彼を見つけられないんです…。そこで私が独自に調査したところ、ステップシークエンスの最後のアーティストはスペイン人と判明し、SNSで連絡を取りました。彼は、私が彼の音楽で滑っていることを知り、とても喜んでくれて。しばらく語り合い、その楽曲も問題ありませんでした。残るはファレルだけです」

最終的に、所属レーベルの制約で1曲だけ問題が生じているそうだが、許可されそうという。

「だから今日は、もうミニオンズの曲で練習しました。おそらく10日(日本時間11日のSP当日)までには。Clickn Clearから『今日(5日)中に完了するはずだ』とも連絡をもらったので、最後、ライセンスを購入するメールが届くのを待っているところ。届いたら、すぐ購入できるし、もう大丈夫だよ。グラシアス!(ありがとう)」

当該のSP曲は4つの音楽を組み合わせて構成されている。「Universal Fanfare」と「Vicious Funk」の使用は既に認められた一方「Freedom」と「Papaya」は承認待ちだったが、さらに1曲クリア。この日の練習では、その4楽曲が全てつながって流れていた。

映画からインスピレーションを受けた、黄色のシャツにデニムのオーバーオールという「ミニオンズをほうふつとさせる」衣装は、まだ着ていなかった。こちらも当日は問題なく着用できる見通しという。

スペインは団体戦の出場権(世界10チーム)を有していないため、個人戦だけ出場する。男子のSPは10日(日本時間11日)。13日(同14日)にフリーが行われる。

グアリノサバテは、同国カタルーニャ出身のスケーター。ハビエル・フェルナンデスの引退後、スペイン選手権で6連覇するなど国内最強だった。世界選手権は25年の20位が最高。五輪でもSPで結果を残せば、上位24選手によるフリーに進出できる。