パリオリンピック(五輪)のセーヌ川で行われた26日(日本時間27日深夜)の開会式で、北欧スウェーデンの選手団は日本の「ユニクロ」の公式ウエアを着て、晴れ舞台に立った。
ユニクロはパリ五輪・パラリンピックで、同国代表に東京と北京の両大会に続き、パリでもウエアを提供している。
五輪の公式ウエアといえば、スポーツ専門メーカーのものがほとんど。一方、ユニクロは「究極の普段着」を目指すメーカー。世界中に店舗を展開し、車いすテニス、テニスやゴルフ、スノーボードの世界的選手と「グローバルアンバサダー契約」を結んではいるが、スポーツウエアのみで勝負しているブランドではない。
なぜ、スウェーデン代表がユニクロを選んだのか-。
両者の結びつきは、2018年。ユニクロがスウェーデンに出店したことがきっかけだったという。同国オリンピック・パラリンピック委員会の関係者がほれ込み、タッグを組むことになった。
ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井康治取締役は、日刊スポーツの取材にユニクロの立ち位置と、五輪への思いを、次のように語った。
「もう、スポーツが特別なものじゃなく、どんな人もジョギングやお散歩をされたり、テニスやゴルフ、サッカーをされたりということが、比較的、当たり前に日常生活の中に組み込まれてきています。より多くの方が体を動かす瞬間が増えてきている。
ユニクロの、そもそもの服の考え方は他のスポーツブランドさんとは全く違うアプローチです。スポーツブランドさんだと、このポロシャツはゴルフ用、こっちはテニス用、このシャツはサッカー用と、競技によって分けてお作りになられています。
僕らの場合は、別にこれをテニスで着ようがゴルフで着ようが、クールビズで、ビジネスの場面で着ようが、そのまま土日のバーベキューの時に着てもらおうが、その方に決めていただければいいわけです。
どのオケージョン(行事、場面)でも快適さが担保されていればいいという発想なので、そこに境がない。あまりこう、カテゴリーとかボーダーラインみたいなものは感じていません。
(今回)多くの方に見ていただけたり、本当トップレベルのアスリートの方に、その究極の場面で活用してもらって評価をしてもらえることは、非常にいいこと。
他社さんと比べる立場に、僕らはないんですが、お客さまは見る、見られるわけです。いろんなブランドさんを見られて、『スウェーデンのウエアかっこいいな』と思ってもらえたら、それはそれで、とてもありがたいです」
今回で、ともに五輪の大舞台に挑むのは3度目。3年前の東京から、時間もたち、一層、両者の絆が深まったこともあり、よりユニクロらしいシンプルなデザインと、色使いになっている。
ほとんどの国が公式ウエアは国旗の色、国のカラーが軸になる。スウェーデン国旗は鮮やかな青と黄色。東京五輪では、そのまま、明るい青が目立つデザインだった。
だが、3年たち、パリではより落ち着いたネイビーを基調としたデザインになっている。発表資料によると「パリの華やかな街並みに溶け込む、シンプルで美しく、洗練されたデザイン」だという。
デザインなどを取り仕切るユニクロのR&D統括責任者、勝田幸宏氏は、こう説明する。
「とにかく、やはり、オリンピアンを一番、尊重しています。オリンピアン、その人それぞれのバックグラウンド、ビハインドストーリーがわかるくらいに、そこまではわからないかもしれないですが、思いとしては(ユニクロのウエアを着用してもらい)それを伝えたい。我々がそのお手伝いというか、サポーター役になれれば幸い、というなかで服作り、色やデザインをした、というのが我々の思い」
多くの人が、まさに肌で感じたことがあるだろう、肌触りが良く汗を速乾させる「エアリズム」の素材などもフル活用。選手の声をもとに素材や着心地も改善を進め、環境にも配慮し、リサイクル素材を積極的に取り入れた。
競技以外の場面で選手たちが着用するウエアの開発段階では、パリの夏の気温、室温などの気象条件をユニクロ有明本部(東京都)にある「人工気象室」で再現。モニターテストも重ねた。
五輪という4年に1度のスポーツの祭典。たぐいまれな才能と、研さんを積んできた最強のアスリートがパリに集う非日常の17日間。“日本代表”のユニクロは、スウェーデン代表とともに最強の「普段着」でそのひのき舞台に立った。【八反誠】



