日本選手団の主将を務める陸上男子短距離の山県亮太(29=セイコー)が、東京五輪に臨む決意を表明した。

6日、都内で行われた結団式と壮行会に、副主将に起用された卓球女子の石川佳純(28=全農)、旗手を担うレスリング女子の須崎優衣(22=早大)とともに出席。コロナ禍のため、他選手はオンラインで参加という異例の状況の中、全力で戦い抜くことを誓った。

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苦難の末に、23日に東京五輪が幕を開ける。未知のウイルスによって、1年延期。まだまだ終息は遠い。いつもなら大勢の選手が一堂に会する結団式も、密を避けるため、ほとんどはオンライン参加。君が代は「歌声」は禁止で演奏だけ。結び合う5つの輪に象徴される団結と相互理解の精神が宿る「平和の祭典」は、賛否が真っ二つに割れる。その難しい情勢の中、史上最多となる日本選手団582人を代表し、主将の山県は誓った。

「私たちは自国開催である東京五輪の日本代表選手に選ばれたことに誇りを持ち、自覚と責任を持って大会に挑みます。コロナ禍で開催自体の意義が問われる中、常に自分たちに何ができるのか、スポーツの意義について考えてきました。今、自分たちにできることは、真摯(しんし)に競技に向き合い、ベストを尽くすことだと思います。スポーツの力を信じ、チームジャパンの一員として全力で戦い抜くことを誓います」

マスク越しの言葉にも、強い決意はにじんだ。「日本代表選手団 山県亮太」と結んだ。主将は名誉であるが、矢面に立つことにもなりかねない。もともと競技で結果を出したい思いが最優先で、引き受けるか本当に悩んでいた。ただ「自分の一生懸命なプレーを前面に出すことが意味がある」と考え抜いた末、その大役を引き受けた。最初の仕事を立派にやり遂げた。

スポーツの力とは-。1年以上前から山県は考えていた。式後の会見。こう言葉をつむいだ。

「自分にとってのスポーツの意義は、自分の競技人生、また人の人生を豊かにするもの。今回のオリンピックでも見てくださった方が、スポーツで気持ちが明るくなるきっかけになればいい」。自身も過去2年は故障が重なり、暗闇の中にいた。これまで東京五輪が歩んできた道のように、困難な過程を経て、6月6日に日本記録9秒95を出すなど、今にたどり着いた。全員がおのおのの思いを背負って、示す夢舞台。いよいよ東京五輪がやってくる。【上田悠太】

○…日本選手団の尾県総監督が、4人を選考した理由を説明した。山県主将について「リオ五輪からここまでのプロセス。本当に苦労して、たどり着いた精神力」を評価。石川副主将は「スポーツの力を人々に伝える能力がある。明るさがある」。また女子旗手の須崎は「(JOC)エリートアカデミー生として模範になる存在」。男子旗手の八村については「インターナショナルな選手。これから彼の背中を追って多くの選手が海外に出ていく。その目標になる存在」と話した。