球界も21年東京オリンピック(五輪)へ、リスタートする。侍ジャパンは25日、今夏までの契約だった稲葉篤紀監督(47)に遅くても来夏までに延期となった五輪へ続投を要請した。正式決定には至っていないが、順調に話し合いが進んでいる。1年延期となったことで侍ジャパンを取り巻くメリット、デメリットを担当記者が読み解く。

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五輪延期で侍ジャパンの見えない運命が変わる。そこにはメリットもデメリットも介在する。

21年の当初の国際大会スケジュールには3月にWBCが書き込まれていた。06、09年大会で連覇し、侍ジャパンの名声を高めた。昨年11月のプレミア12で10年ぶりの世界一に輝いたが、大会の認知度はWBCの方が依然、高い。そこに東京五輪が加えられる。

未知のウイルスによりWBCが予定通り開催される保証はない。ただ1シーズンに2つの大きな国際大会があれば、選手の調整は難しくなる。派遣する側の球団も選手によってはWBC出場に難色を示すケースも出てくるかもしれない。だがWBC自体も五輪前の前哨戦になるため、ベストの布陣で臨みたい。理想と現実が相反する。

チームの根幹を成す選手も変わる可能性がある。巨人菅野、DeNA山崎らが将来的なメジャー挑戦を希望している。ポスティング制度での移籍が球団に容認され、選手も決断すれば、五輪出場は厳しくなる。枢軸が再編成を強いられる。

一方で希望が芽吹く時間も与えられた。ロッテ佐々木朗、ヤクルト奥川ら傑出した才能がいる。佐々木朗は今夏に向けても代表候補の大枠に名を連ねていたが、高卒新人がオリンピアンになるのは現実的ではなかった。だがプロで最大1シーズン半を経験するなら話は変わる。来年2年目の「令和の怪物」が加わっても不思議ではない。

足のスペシャリスト、ソフトバンク周東も課題の打撃力を伸ばす猶予ができた。チームでレギュラーを奪えれば、24人に限定される五輪代表の座も見えてくる。今、五分五分に感じるメリット、デメリットのてんびんがどちらに傾くかは、21年の東京五輪で明白になる。【侍ジャパン担当 広重竜太郎】