金メダルへのロードマップを再び描く。侍ジャパン稲葉篤紀監督(47)が17日、札幌市内で1年延期となった東京オリンピック(五輪)へ契約延長要請を井原敦強化委員長から受け、受諾した。新型コロナウイルスの感染拡大で視察や強化試合設定など不透明な状況は続く。それでもプレミア12優勝の土台を堅持しつつ、若手の台頭も期待し、新たな1年の月日を悲願のためにささげる。

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稲葉監督の黄金色に輝く至宝への思いはいちずだった。本来なら精鋭24人を選び終え、五輪初戦まで2週間を切っている時期。不条理なウイルスに道中は一変した。札幌市内で1年の契約延長要請を受け、強化へ細部の協議を残すも受諾した。「就任時より、五輪の借りは五輪で返すと申し上げてきた。考えに変わりはない。金メダルへ全力を傾けたい」と揺るがなかった。

昨年11月のプレミア12優勝で、最高潮で自国開催の五輪を迎えるはずだった。忍び寄るウイルスの影をうすうす感じ、猛威が表面化し、延期を受け止めた。「昨年からコロナのニュースを見て、もしかしてというのは正直あった。自分でコントロールできないので、延期と聞いて気持ちを切り替えなければいけないと思った」と心を保った。

新たに授かった1年の月日。考察を積み重ねる。「正直、プレミア12のイメージがずっと残っている。土台という考え方には変わりはない。ただ、本番が1年延期になったので、柔軟に考えていく」。固定概念はない。「どんどんイキのいい選手が出てきてほしい。ジャパン、球界にとっても、非常にうれしい」と望む。

難題も抱える。球場への視察は控え、リモートでの分析作業が続く。五輪に向けた強化試合の設定も不透明。例年は3月に設けていたが、今年は開幕が早まる選手への負担を考慮し、組まなかった。来年3月も今季11月まで戦う選手への負担は避けられず、他国を呼べるかも分からない。そもそも五輪開催自体も危ぶまれている。

今は野球の、スポーツの持つ力を信じる。「6月に開幕し、みなさんが少しずつ喜んでいる姿を見て、やはり野球はいいなと。スポーツの持つ力は非常に強いと感じた。来年の五輪がどうなるか正直分からない部分もあるが、五輪で金メダルを取って、みなさんと喜び合いたいという新たな気持ちになった」。23日に五輪まであと1年を迎える。競技日程は21年7月28日から8月7日。熱い夏を金色に染める。【広重竜太郎】