西武の160キロ右腕、昨季新人王の平良海馬投手(21)が、東京オリンピック(五輪)に挑む侍ジャパン候補に急浮上した。8日、宮崎・南郷での春季キャンプを稲葉篤紀監督(48)が視察し、外国人打者にめっぽう強い平良を高評価した。今季プロ4年目の剛腕にとって、縁もゆかりもない国際舞台が一気に近づいてきた。金メダル獲得となれば、沖縄出身選手として初の快挙となる。

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縁もゆかりもない侍ジャパンが現実味を帯びても、平良にはまったく実感がわかなかった。稲葉監督の高評価を受けて「まだ代表を経験したこともないので想像もつかないんですが、ぜひ選ばれるように頑張りたいです」。侍へのあこがれは「あんまり分かんなくて。唯一知っているシーンが、韓国かどっかの試合でイチローさんがセンター前に打ったというところ」。09年WBC決勝で放った伝説的な一打も記憶は危うい。自分が投げることなんて、想像もしたことがなかった。

沖縄・石垣島で生まれ育った平良にとって、五輪は遠く離れた存在だった。「オリンピックですか、オリンピック、オリンピックは…。オリンピックはあんまり分かんない」。小学3年で野球を始め、高校も島から出ずに八重山商工。150キロを超える好素材を発掘した西武で、プロ入り2年目からデビューを果たし、昨季はセットアッパーとして54登板1勝33ホールド1セーブ防御率1・87の成績を残し新人王。身長173センチ、体重100キロの体形からくり出す160キロの直球に、自然と注目度も増していった。

はち切れんばかりの胸板は、ベンチプレス130キロを持ち上げる。常にクイックモーションから繰り出す直球を軸に、チェンジアップで緩急をつけ、カットボールで芯を外す。特に外国人選手には無類の強さを発揮し、昨季成績は22打数1安打0本塁打13奪三振と圧倒した。

稲葉監督は「あの速いクイックは最初は戸惑うと思いますし、なかなか初見ではタイミングを合わせるのはできない。あのクイックに合わせてストレートの強さがあるので、外国人も打ちにくい」と対外国人打者に効果を発揮すると分析した。

沖縄出身でのメダリストは過去に1人だけ。金メダリストとなれば史上初となるが「選ばれるのはすごい名誉なことでもあるので、選ばれてみたいです」。どこまでもマイペースに日の丸を背負った自分を少しだけ、想像していた。【栗田成芳】