内村航平(32=ジョイカル)の種目別鉄棒での金メダルへの挑戦がいよいよ本格化します。16日、東京五輪選考会となる全日本選手権(高崎アリーナ)での種目別トライアウト(午後6時30分開始)から、国内での代表争いに臨みます。選考方法は少々複雑。決戦を前に説明します。

狙うのは4人が出場できる団体枠ではなく、個人枠での出場。枠は最大2枠で、内村が該当するのは全日本選手権、NHK杯(5月、長野)、全日本種目別選手権(6月、高崎)の結果で決まる枠です。6種目それぞれの選手がライバルになります。

日本体操協会(JGA)は新型コロナウイルスの影響で開催が1年延びたことに伴い、選考基準を新しく作りました。選出方法については以下のように明記しています。

「世界ランキングの総ポイント最上位を選出」

「JGAにより作成された世界ランキング(全日本種目別決勝終了時に作成)において、全日本個人総合(予選・決勝)、NHK杯、全日本種目別(予選・決勝)の5回の演技の得点を当てはめ、その順位に合わせてポイントを付与」

まず「世界ランキング」とは、19年世界選手権と種目別W杯の4試合の計5試合に、国内選考会(団体枠選出メンバーが対象)3試合を加えた計8試合の得点を対象にして作成されるランキングになります。ただし、現在日程が未定のW杯ドーハ大会が全日本種目別より後に実施された場合は対象外となり、計7試合になります。

6種目それぞれに各試合の得点を一覧し、上位から順位付けを行います。例えば終了している海外4試合の結果での鉄棒の暫定ランキングは以下です。

<1>14・933点<2>14・900点<3>14・9000点<4>14・866点(得点が同じ場合はDスコアが高い選手が上)。

今後、国内選考会での得点もあてはめていき、独自の世界ランクとなります。そこに各選手の5試合それぞれの得点を照らし合わせ、当該順位を見てポイントを付与します。1位かつ0・2点差以上=40点、1位=30点、2位=20点、3位=10点、4位=5点の設定になります。この合計点が多い選手が個人枠を獲得できます。

 

以上が基準ですが、では内村の代表の可能性はどれくらいあるのかを考えます。まず鉄棒は他の6種目に比べて、世界ランクの得点が低いと言えます。他5種目に比べて、スペシャリストの得点が高くはありません。内村の昨年12月の全日本選手権決勝のスコアは15・700点で、世界ランクの1位を0・767点も上回っています。1位から0・2点以上の差があるため、40点を得ることができます。もし5試合ですべて同程度のスコアを並べれば、代表入りは濃厚です。

他の種目を見ると、得点傾向で代表入りが厳しい種目が明らかです。あん馬、つり輪、平行棒は世界ランキングの得点が高く、該当順位で上位の得点を狙うには大きく自己ベストを更新する必要がありそうです。

鉄棒の「ライバル」となりそうな1番手は床運動です。世界ランクの1位は15・300点で、南一輝(仙台大)は昨年の全日本種目別決勝で15・600点を記録しています。順位付けすれば40点を獲得できます。内村同様に、5試合で同程度の演技を並べれば、枠を争う存在となりそうです。跳馬で「ヨネクラ」の技を持つ米倉英信も、昨年の全日本種目別決勝では15・133点を出しています。これは世界ランク1位の14・966点を上回ります。

6種目で最大2人と狭き門ですが、現状で候補選手は絞られています。各選手はライバルの演技構成、得点などもにらみながら、4月からの3試合を戦うことになります。【阿部健吾】