「オリンピック(五輪)大国」米国に衝撃が走った。米疾病対策センター(CDC)が16日、今後8週間のイベント中止を勧告。大リーグやNBAはもちろん、五輪関連の大会も5月中旬まで開催が不可能になる。東京五輪開幕の7月24日までは4カ月以上あるとはいえ、予選大会の中止で出場選手も決まらない状況。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は17日に各国際競技連盟(IF)と会議を行い、予選システムの見直しを検討する。

米CDCの勧告内容は、厳しいものだった。「今後8週間、50人以上が集まるイベントの中止」。感染者が3000人を超えるなど新型コロナが爆発的な広がりを見せる米国は、わずか50人の集まりさえ制限するほど追い込まれていた。

五輪のたびに巨大な選手団を送り込む大国。獲得した金メダルは夏冬合わせて1127個と473個で2位ソ連の倍以上(日本は156で13位)。しかし、そんな五輪大国も非常事態宣言でスポーツどころではない。一発勝負で「五輪以上のレベル」といわれる予選の全米陸上、全米水泳も開催ピンチになっている。

IOCの収益を支えているのは、米NBCの放送権料。東京大会も競泳などが米国のゴールデンタイムに合わせて午前決勝になるなど、五輪は「米国のための大会」でもある。その米国のスポーツ界が「8週間沈黙」となれば、五輪開催に影響がないわけがない。

もっとも、IOCがそれ以上に課題としてあげるのは次々と予選大会が中止になって選手が決まらないこと。バッハ会長は「選手が55%しか決まっていない」と話した。この日もトライアスロンが4月末までの全大会中止を発表。ハンドボールは3、4月の最終予選を6月に延期した。

五輪開幕の7月24日に終息していれば開催できるわけではない。それまでの予選ができなければ、出場選手がいなくなる。団体球技で出場チームが出そろっているのは3競技だけ。残りの予選は、いつになったらできるのか。個人競技の多くはランキングによって国や個人に出場資格が与えられるが、それも中途半端なまま試合が中断している。

バッハ会長は「公平な方法で選手を選びたい」と話す。予選システムはIFが決め、IOCが承認する。「中止」「延期」が相次ぐ五輪予選大会。東京五輪に公平に選手を送り込むために、バッハ会長は各IFからも意見を聞く。選手の最終エントリーは7月6日。遅くても6月には選手を決める必要がある。

もう1つ、五輪に影響しそうなのは6月12日からのサッカー欧州選手権。17日には欧州連盟(UEFA)が開催可否について、電話会議を行う。欧州では五輪をしのぐほどの人気の大会だけに中止や延期となれば五輪への影響も避けられない。国内が終息しても、海外でのパンデミックが開催へのハードルになりそうな東京五輪。最後まで通常開催を目指すが、その道はまだまだ険しい。