東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの1年程度延期で選手の心理面は? 大阪体育大学(大阪・熊取町)体育学部の菅生貴之教授が28日、スポーツメンタルトレーニングやカウンセリングなどを専攻する専門家の目線で分析した。

今回の延期については「80年モスクワ五輪のボイコットで泣きじゃくった選手の姿を覚えているが、それに匹敵する未曽有の事件だ。選手への影響が大きいかどうかよりも、選手はこれから何が起きるのか分からない状況であり、不安以前に『一体どうなってしまうのか』という気持ちだろう」とし、日本オリンピック委員会(JOC)や競技団体が率先して五輪に向けたプランを立てることを求めた。

菅生教授は「アスリートセンタード」を提言する。

「『アスリートファースト』というよりは、選手を中心とした『アスリートセンタード』で考えるべきだ。決してコーチはセカンドではないし、アスリートをコーチや競技団体の役員、栄養・フィジカル・メンタルなどの専門ら、支える人たちのセンターに置き、選手を中心に考える視点を各競技団体が重視してほしい」

選手には不安や怒りの感情を多くの人と共有することを、アドバイスした。

「逆境を人生の重要な転換点ととらえて次の力にできるかどうかは、選手の人間力というか人生が試される。延期は本人の努力の問題ではなく、完全に外的な要因だ。不安や怒りの感情を包み隠す必要はなく、多くの人と共有してほしい。親、親友、コーチなど耳を傾けてくれる人を大事にして、今回起きたことの人生においての位置づけを考えてほしい。もちろん私たち専門家もそうした役割を担うことは可能だろう」

菅生教授は06年トリノ五輪の代表選手を対象にメンタルサポートを実施。最終合宿に同行した経験を持っている。