辞任を表明した東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)の後任人事の選考過程について、内部から「またしても不透明だ」という非難が続出していることが15日、複数の大会関係者への取材で分かった。組織委は新会長の候補者を決める検討委員会のメンバーを「マスコミが殺到する」などの理由から、理事にも公表せずに進めるとしているが、またしても「密室人事」との指摘が出ている。

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組織委は「候補者検討委員会」を評議員、理事に公表することなく新会長候補を選ぶ手続きを12日に固めた。組織委幹部は「委員にメディアが殺到する」「委員に何らかの働きかけがある可能性が出る」などと説明。この配慮が、各理事をはじめとした関係者の間では「不透明だ」との批判が相次ぐ要因となっている。

理事の1人は日刊スポーツの取材に「(身内の)理事にも説明しないなんて。あり得ない。よくぞ透明性など言えたものだ」と憤った。組織委の武藤敏郎事務総長は、検討委のメンバーについて人数1桁、男女半々、アスリート中心、都やJOC関係者で構成する方針を示したが、どう会長候補が挙がるのか、公表されていない。ほかの理事は委員の構成のみならず、その点が問題だと指摘している。

「元アスリートで、政官財を含め、今後の組織委にどのような問題が起こるかを予想して的確に対応できるのか。候補者を絞って検討委に挙げるなど、事務方の意図をくむ形だけの検討委になりはしないか」。事務局の恣意(しい)的な候補者選びが懸念される可能性が出ており「合同懇談会でも検討委メンバーは世間にも公表すべきだと思った。そうでなければ、透明性などと自信を持って言い切れない」と話す理事もいる。

ところが、複数の大会関係者によると、12日の会でJOC山下会長は「検討委メンバー非公表」に賛同したという。開催都市の都庁関係者はあきれた様子で話す。「川淵人事と全く同じだと見られる。また密室人事だ、と非難されるに決まっている。組織委は何度、同じことをするんだ」と。

かつては大会エンブレムのデザイナーを身内で選定したことで盗作疑惑にまで発展した。その後、過剰なまでに情報公開を徹底。信頼回復に努めてきたが、ここにきて“先祖返り”していると指摘する声もある。