19年ラグビーワールドカップ(W杯)で日本代表の8強入りに貢献したWTB福岡堅樹(27=パナソニック)が14日、オンラインで記者会見を開き、7人制日本代表の引退を表明した。

新型コロナウイルスの影響で1年延期になった東京オリンピック五輪出場を断念し、医学部への進学を優先することを決意。現役引退時期については明言を避け、来年1月開幕予定のトップリーグ(TL)に出場する意向も示した。

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紺色のスーツ姿の福岡は、すがすがしい表情で7人制代表の引退を報告した。「引退時期を含めて1度決めたことを貫きたく、『どの選択が一番後悔しないか』を考えて代表引退の決断に至った。自分の決心に揺らぐことはなかった」。まっすぐと前を見つめ、幼い頃からの夢である医師への道に進むことを明言した。

今年3月の7人制代表候補合宿中に「五輪延期」がうわさされ、人生設計について熟考した。同24日に五輪延期決定が発表された時には、代表辞退が決まっていた。「昨年のW杯で盛り上がり、自分はこういう運命なんだ」。7人制代表の岩渕健輔ヘッドコーチに直接相談し、意志を尊重されたという。コロナ禍は「自分でコントロール出来ない問題」と受け止め、落胆はなく前向きに捉えた。自粛期間中は、これまで以上に勉強に励んだ。

内科医の祖父と歯科医の父を持ち、知人の医療関係者が新型コロナ対応で奮闘していることを聞き、さらに医師を志す気持ちが高ぶった。「これまでトップでやってきた経験をいかして、けがの治療だけでなく、精神面も寄り添える医師になりたい」と理想像を明かした。

医学部の受験計画や現役引退時期は明言しなかったが、来年1月開幕予定のTLに出場する考えを示した。「優勝を経験してないので、そこで後悔ないように、最後は笑って終わりたい」。文武両道を貫く27歳のラガーマンは、爽やかな笑顔で1時間の会見を終え、新たなスタートを切った。【峯岸佑樹】

<アスリートの華麗なる転身>

◆医者 プロ野球で元広島のゲイル・ホプキンス氏は75年に33本塁打、91打点でリーグ初優勝に貢献。広島時代は医学書をベンチに持ち込み、引退後は米シカゴのラッシュ医科大で整形医学を学び、博士号取得。

◆弁護士 JリーグのG大阪などでプレーした八十祐治氏は、31歳から司法試験の勉強を開始。4回目の受験となった05年に合格。

◆公認会計士 プロ野球で元阪神の奥村武博氏は、4年の現役生活を経て、アルバイトや会社員として働きながら勉強。9年かけて公認会計士の試験に合格。

◆ノーベル賞 英国の陸上選手だったフィリップ・ノエル・ベーカー男爵は、1920年アントワープ五輪男子1500メートルで銀メダル。その後は英国の国会議員として、軍縮による平和推進に尽力。56年にノーベル平和賞受賞。世界で唯一、五輪のメダルとノーベル賞の両方を持っている。