【右投げ左打ちの功罪〈13〉】右左どっちがいい? 右利きスイッチ松井稼頭央の場合

「いいとこ取り」ならスイッチヒッターが一番では? その数が、困難さを物語っています。日米で活躍した両打ちの名選手が、比較論を展開します。

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★全員が右/右 プロ入り後に転向

右投げ左打ちが増える要因を考える上で、気になるのがスイッチヒッターの存在。

当然ながら同じ選手が、左右の違った打席に入る。「左右による打撃技術の違いは?」「どちらの打席が有利か?」「なぜ右投げ左打ちが多くなるのか?」。謎を解くカギにつながるのではないだろうか。

名球会入りしているスイッチヒッターは柴田勲氏、松井稼頭央氏の2人だけ。少数なので、日本で活躍した主なスイッチヒッターの左右の打撃成績を調べてみた。

※本塁打数の後の()内の数字は、本塁打率。1本塁打を打つまでに何打席を要したか

※日本球界に残っている記録は、左右の打席別の成績ではなく、右投手と左投手に分けた成績。例えば右投手との対戦で右打席に入ったケースもあるが、少数だと思われるため、ご了承下さい

ここに挙げた7選手は、全員が右利きの右投げで、プロ入り後にスイッチヒッターに転向している。

転向前に右投げ左打ちだったのは西岡剛だけで、他の選手は右打者からの転向だった。転向した理由を日米通算で2705安打し、スイッチヒッター最多安打を記録している西武松井稼頭央ヘッドコーチに聞いた。

松井ヘッドコーチ最初は谷沢さん(当時の西武打撃コーチ)に「左で振ってみろ」と言われてやっていたんですが、本格的ではなく、中途半端に終わってしまったんです。でも、左投手と対戦した右打席の打率が3割近くあったのに、右対右の打率は2割ぐらいしかなかった。その後、土井(正博)さんが打撃コーチになって「それならば、左で三遊間を狙って足を生かしたらどうだ」と言われ、本格的に挑戦することになりました。

プロを中心とした野球報道が専門。取材歴は30年を超える。現在は主に評論家と向き合う遊軍。
投球や打撃のフォームを分析する企画「解体新書」の構成担当を務める。