【深掘り】割りとは?間とは?指導者必見の技術/和田一浩氏の考える強打者論〈2〉

日刊スポーツ評論家の和田一浩氏が展開する「強打者論」第2回。和田氏のキラーワード「割り」の徹底解説です。(2020年5月20日掲載。年齢などは当時)

プロ野球

和田一浩氏(47)の「強打者論」第2回のテーマは、強打者になるために必要な技術。バッティング理論の土台をベテラン遊軍・小島信行記者に、じっくり分かりやすく解説してくれました。指導者の方は必見です!

★目安となる数字

小島記者 前回は、「強打者」とは『打線の「盾」になるような打者』と、具体例を挙げて解説してもらいました。長打力があって対戦相手に「怖さ」を感じさせ、なおかつ簡単に三振しないといった「いやらしさ」を兼ね備えているという条件を挙げられました。

和田 そうやって短く説明すると、なんか偉そうですねぇ(苦笑い)。簡単に三振しないというより、簡単に打ち取られない、とした方がいいでしょう。「ここに投げときゃ大丈夫」みたいな、大きな弱点がないことも条件になりますから。

小島 分かりやすく「強打者」の目安になる数字を挙げるとすると、どれくらいですか?

和田 打率3割以上、出塁率4割以上で、長打率は最低でも5割はほしいですね。ホームグラウンドでは、どんな球場でもシーズン20本以上は打つ能力が必要ですね。

<打率3割、出塁率4割、長打率5割以上、本拠地20発以上>◆和田氏の「強打者の目安」をクリアした選手過去10年で5人(7度)だけ。唯一複数回記録したのが山田哲(ヤクルト)で、いずれもトリプルスリー達成の年にクリアした。過去10年はすべてセ・リーグの選手で、パ・リーグでは05年松中(ソフトバンク)が最後。同年は打率3割1分5厘、出塁率4割1分2厘、長打率6割6分3厘で、本拠地で24本塁打だった。

過去10年、和田氏の「強打者の目安」をクリアした選手

過去10年、和田氏の「強打者の目安」をクリアした選手

小島 その数字は大変ですね(苦笑い)。それだけ打てば、間違いなく「強打者」になるでしょう。

和田 でもシーズンで2人ぐらいはいるんじゃないですか。毎年数えているわけではないけど。

小島 では「強打者」になるために必要なものは何ですか?

和田 やっぱり技術とパワーの両方が必要です。

小島 パワーについては、野球は体重制限がない競技ですから、スカウティングでも体の大きさが重要視されますもんね。では技術について、もっと詳しく説明してもらえますか。

★後ろ側の肘が肝

和田 技術とパワーって、切り離して考えると言葉で説明するのは難しいですねぇ。どれぐらいのパワーがあるかによって、必要な技術は変わってくる。例えば、パワーのある外国人は大きく反動をつける必要がない。あまり足を上げなくても強い打球が打てますよね。もし当てるだけならバットも捕手側に寝かせ気味にして、バスターのような感じのスイングでいい。でもそれじゃ、ほとんどのバッターは強い打球が打てない。

小島 メジャーでシーズン70発のマグワイアは、バットを寝かせ気味にして反動を使わずに打っていましたね。恐ろしいぐらいのパワーでしたが、ステロイドの使用を告白しました。

和田 これは間違った考え方ですが、違反してまでもパワーをつけたい、体を大きくしたいと思ってやっている選手はたくさんいますよね。言い換えれば、それぐらいパワーがつけば簡単な打ち方で強打者になれるってこと。絶対にまねしたらダメですけど。

小島 薬物は体がおかしくなるし、危険です。

和田 体を大きくしたいなら、しっかり飯を食って、ウエートトレーニングをやってください!

小島 では、ある程度のパワーがある場合に、強打者になるために必要な技術とは?

プロを中心とした野球報道が専門。取材歴は30年を超える。現在は主に評論家と向き合う遊軍。
投球や打撃のフォームを分析する企画「解体新書」の構成担当を務める。