【右投げ左打ちの功罪〈2〉】率を残すのは?長打力は? 打撃上位から見た左右の違い

右打ちと左打ちは、どちらが有利なのか? 誰もが抱く疑問に、野球記者歴32年のベテランが挑みました。調査→仮説→取材を繰り返す「調査報道」の手法で核心に迫ります。(全15回掲載)

その他野球

★長打率とOPS 右打者が圧倒

前回は、21年シーズンのプロ野球界で、規定打席に到達した打者は左打者が多い統計と、その理由を紹介した。

確かに規定打席に達するためには左打者の方が「優位」だ。しかし「左打者=右打者よりも優れている」とはならない。今回は右打者と左打者の打撃内容について分析したい。

2013年10月4日、阪神メッセンジャーから右越えに60号本塁打を放つバレンティン

2013年10月4日、阪神メッセンジャーから右越えに60号本塁打を放つバレンティン

セ・パの規定打席に達した打者で、主な打撃成績を比べてみると

右打者 打率.273、出塁率.347、469本塁打、長打率.450、OPS 0.797

左打者 打率.273、出塁率.349、405本塁打、長打率.408、OPS 0.757

打率に関しては右打者が11631打数3175安打で、左打者が16343打数4459安打。

厳密に比べると、打率は左打者が4毛だけ上回り、出塁率も2厘上回っている。ただ、その差はわずかで、長打率とOPSは、ともに右打者が4分ほど上回っている。

◆OPS【On-base Plus Slugging】出塁率+長打率で算出する指標で、打者の総合的な攻撃力を表す。チーム得点との相関が強く、大リーグでは打率などと同等に扱われている。平均は0.710前後で、0.900以上で一流、1.000以上で超一流とされる。21年のエンゼルス大谷翔平はア・リーグ2位の0.965。

本塁打だけを比べても右打者が469本塁打、左打者は405本塁打。

左打者に比べて4712打数も少ない右打者が、64本塁打も上回り、圧倒している。

近年、打者の能力は打率よりもOPSが高い方が強打者に分類されている。長打力に勝る右打者が、左打者よりも優れているといえるだろう。

2012年9月4日、阪神久保から左越え2ランを放つ巨人阿部

2012年9月4日、阪神久保から左越え2ランを放つ巨人阿部

最近10年間で、セ・パの打率と本塁打のトップ10に入った人数を比べてみた。

☆打率

右打者 88人(セ51、パ37)

左打者 110人(セ48、パ62)

両打ち 3人

☆本塁打

右打者 148人(セ74、パ74)

左打者 59人(セ31、パ28)

両打ち 0人

打率こそ左打者の方が多いが、本塁打は右打者が圧倒的にリードしている。

プロを中心とした野球報道が専門。取材歴は30年を超える。現在は主に評論家と向き合う遊軍。
投球や打撃のフォームを分析する企画「解体新書」の構成担当を務める。