【右投げ左打ちの功罪〈3〉】世界では右打ちが多い?それとも左? 他競技の比率から

右打ちと左打ちは、どちらが有利なのか? 誰もが抱く疑問に、野球記者歴32年のベテランが挑みました。調査→仮説→取材を繰り返す「調査報道」の手法で核心に迫ります。(全15回掲載)

その他野球

★ゴルフ、テニス、バド、卓球

ここまでは、プロ野球の21年シーズン成績をメインに、左右の打者の人数や成績を比べてきた。

規定打席に到達するためには左打者が有利だが、強打者の比率は右打者が多いことが分かった。

ただ、あくまでも21年シーズンでの比較でしかないため、ここ5年間で規定打席に達した打者の人数と成績を集計した。

右投右打=右右、右投げ左打ち=右左、左投げ左打ち=左左、左打ちは右左+左左、右投げ両打=右両

右投右打=右右、右投げ左打ち=右左、左投げ左打ち=左左、左打ちは右左+左左、右投げ両打=右両

年度別に見ても、打率と出塁率は左打者がすべての年で上回り、長打率はすべて右打者が上回っていた。OPSで左打者が右打者を上回った年は2度あるが、合計では右打者が優位となっている。

◆OPS【On-base Plus Slugging】出塁率+長打率で算出する指標で、打者の総合的な攻撃力を表す。チーム得点との相関が強く、メジャーでは打率などと同等に扱われている。平均は0.710前後で、0.900以上で一流、1.000以上で超一流とされる。21年のエンゼルス大谷翔平はア・リーグ2位の0.965。

右投右打=右右、右投げ左打ち=右左、左投げ左打ち=左左、左打ちは右左+左左、右投げ両打=右両

右投右打=右右、右投げ左打ち=右左、左投げ左打ち=左左、左打ちは右左+左左、右投げ両打=右両

ここまでで気になったのは、日本球界では「右投げ左打ち」が多いこと。

世の中の右利きと左利きの比率は9・1と言われている。それなのに、ここ5年間の規定打席到達者は、左打者が多い。

21年のメジャーで、打率とOPSのトップ50と比べてみる。

☆打率のトップ50

右打ち 32人

左打ち 16人(左/左は7人)

右投げ両打ち 2人

☆OPSトップ50

右投げ右打ち 30人

右投げ左打ち 12人(左/左は2人)

右投げ両打ち 4人

打率とOPSの人数は、日本とは違って右打者が圧倒している。

日刊スポーツ評論家・和田一浩氏右利きと左利きの比率を考えれば、右投げ左打ちが多い日本が不自然な現象と言っていいでしょうね。日本野球は機動力が重視されるし、一塁ベースは左打席からの方が近い。足の速い子どもが、スピードを生かすために左で打て、と指導されることもあるでしょう。松井秀喜、イチロー、大谷翔平とか、メジャーで大活躍したスーパースターも右投げ左打ち。それをまねる影響もあるでしょうね。メジャーは単純に「強い打球を打て、遠くに飛ばせ」って、思い切りスイングさせる指導が基本。だから右打者が多くなるんだと思います。

少し横道にそれるが、道具を使用する他競技の左右の比率を世界ランキングのトップ50から比べてみよう。

◆ゴルフ

49人

1人

◆テニス

44人

6人

◆バドミントン

46人

4人

◆卓球

35人

15人

※統計年度はすべて2021年12月中の発表

基本的に、ほとんどのスポーツは絶対数の少ない左利きが有利と言われている。 その中で右利きが有利と言われるゴルフでの左打ちは、昨年の全米オープンを制したミケルソン1人だけ。

プロを中心とした野球報道が専門。取材歴は30年を超える。現在は主に評論家と向き合う遊軍。
投球や打撃のフォームを分析する企画「解体新書」の構成担当を務める。