角界のアイデアマン 元木村山の岩友親方が仕掛けた土俵外のサービス

若手親方の中に「アイデアマン」がいる。元幕内木村山の岩友親方(42=春日野)は、YouTubeで「親方ちゃんねる」を仕掛けたり、両国国技館内で斬新なガチャを売り出したりと、土俵外の充実にも努めている。日ごろから何を考え、アイデアはどこからくるのか-。岩友親方に聞いた。

大相撲

岩友守(いわとも・まもる)本名・木村守。1981年(昭和56年)7月13日生まれ、和歌山県御坊市出身。箕島高から東洋大学に進み、春日野部屋に入門。木村山のしこ名で2004年春場所初土俵。最高位は西前頭7枚目。2014年初場所限りで引退し、年寄「岩友」を襲名した。通算343勝328敗7休。182センチ、155キロ。愛称はマァマン。

限定ガチャ

大相撲初場所が開催されている東京・両国国技館の2階。エスカレーターを上がってすぐ左の一角は、常に観客が足を止めている。

設置されているのは「国技館限定ガチャ」。ここに28台、少し離れた場所に12台のガチャが置かれている。

ガチャのラインアップは、多岐にわたる。関取控え座布団キーホルダー、大相撲ホテル風キーホルダー、フォンタブ&ストラップ、お相撲さんの標識反射板キーホルダー…。

場所ごとに新商品が追加され、今場所からは「お相撲さんフェイスヘアゴム」などが登場した。明らかに女性客を意識した商品だ。

1回500円で、それぞれ15~20種類の中からどれか1つが出てくる。

ここでしか買えない「限定」という言葉に、ファンは弱い。贔屓の力士が出てくるまで続ける人、全種類そろえようとする人など、「大人買い」するファンも少なくない。

「あんまり、ムキにならないでくださいよ~」

隣接する売店を担当する親方から、「買いすぎ注意」の声が飛ぶこともあるほどの人気コーナーだ。

かつて商品開発に携わってきた岩友親方は「業者さんと職員さんが相談して開発しているので、今は自分はかかわっていません」と前置きしつつ、こう続けた。

「以前、お客さん同士が、(ガチャで出てきた商品を)交換していたのを見た時はうれしかったです。相撲のことで交換して、コミュニケーションが生まれ、集めてくれる。なんか、うれしかったですね」

親方衆のアイデアが、ガチャに反映されたのは2022年から。同年秋場所からは「親方ガチャ 親方だよ!全員集合絵馬おみくじ」が商品化された。全104人(当時)の親方の顔写真、現役時代のしこ名、親方名が絵馬に記載され、裏面に大吉、吉、中吉、小吉、凶、大凶のどれかが書かれていた。

「親方ガチャ 親方だよ!全員集合絵馬おみくじ」で大凶に割り当てられた小野川親方(元幕内北太樹)。現在は販売を終了しています。

「親方ガチャ 親方だよ!全員集合絵馬おみくじ」で大凶に割り当てられた小野川親方(元幕内北太樹)。現在は販売を終了しています。

この時、岩友親方は開発段階から携わった。「大凶は1人の方が面白い」ということで、小野川親方(元幕内北太樹)が大役(?)を担った。

もともとYouTube「親方ちゃんねる」を立ち上げた岩友、小野川、不知火(元小結若荒雄)、北陣(当時は音羽山、元幕内天鎧鵬)の各親方が缶バッチを作ってガチャにしたことが始まりだ。

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スポーツ

佐々木一郎Ichiro Sasaki

Chiba

1996年入社。2023年11月から、日刊スポーツ・プレミアムの3代目編集長。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。 X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで、大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。