【札幌レター〈55〉】阿波加俊太、プロ12年目のJ1デビューとGKの絆

北海道コンサドーレ札幌GK阿波加俊太(29)が3月10日第3節浦和レッズ戦でJ1デビューを果たした。札幌の下部組織出身GKでJ1リーグ戦に出場したのは初めて。まじめにコツコツと積み重ね、プロ12年目でたどり着いたピッチに、札幌のGK陣の絆を感じた。

サッカー

阿波加俊太(あわか・しゅんた)1995年(平7)2月7日、岩見沢市生まれ。札幌U-18時代の12年Jユースカップで優勝。年代別日本代表を経験。13年にトップ昇格を果たし、14年J3相模原、15年JFLホンダFC、17年J2愛媛に期限付き移籍。14年相模原でリーグ戦(J3)デビュー。18年から札幌に復帰し、22年JFL鈴鹿に完全移籍。24年札幌復帰。188センチ、77キロ。利き足は右。特技は料理。

「覚えていない」

J1初出場を終えた阿波加は試合後「覚えていない」と笑った。結果はCKから一瞬の隙を突かれて0-1で敗れたが、相手の枠内シュートを落ち着いてセーブし、最少失点で終えた。試合当日は疲れがどっと押し寄せ、ゆっくり休んだ。オフだった翌日に映像を確認し、無我夢中の90分間を思い出した。次への反省を忘れない。

「終わった後は負けたので勝った時の喜びはなかったけど、J1でのデビュー戦が終わったという部分では、ほっとした。試合の映像を見て、もう少し後ろのビルドアップ(攻撃の組み立て)のところで味方を楽にさせてあげられるようにできれば、チームとしてはスムーズにいくと思った。でもゴールを守るってことに関しては、自分の持ち味はある程度出せたのかなって試合だった」

浦和を終えて引き揚げる阿波加(右手前)(2024年3月10日撮影)

浦和を終えて引き揚げる阿波加(右手前)(2024年3月10日撮影)

いつでも出番への準備はできていた。だから舞い込んだチャンスにも焦ることはなかった。アビスパ福岡との開幕戦前日練習でGK高木駿(34)がミニゲーム中に左膝前十字靱帯(じんたい)を断裂した。開幕から2試合フル出場したのはGK菅野孝憲(39)。ベンチにはGK中野小次郎(25)が入り、自身は外れた。菅野は開幕戦の試合前ウオーミングアップ中に右手薬指を負傷。痛み止めを打ちながら第2節サガン鳥栖戦までプレーするも、浦和戦に向けた練習中に悪化させて離脱。通常ならベンチ入りしていた中野が繰り上がるが、調子の良さから阿波加が起用された。

「スゲさん(菅野)も駿君(高木)も(GKコーチの)赤池さんも、みんなから『いつも通りやれば大丈夫だ』って声をかけてくださった」

2月25日、福岡大との練習試合で阿波加がPKを連続ストップし、盛り上がるチームメート。左から中野、馬場、青木(撮影・保坂果那)

2月25日、福岡大との練習試合で阿波加がPKを連続ストップし、盛り上がるチームメート。左から中野、馬場、青木(撮影・保坂果那)

チームメートから愛される。開幕戦翌日、控え組の実戦感覚を磨くために設定された福岡大との練習試合。PKを2連続でストップした。「阿波加」コールで大盛り上がり。中野は飛び跳ねて喜んだ。試合後ペトロビッチ監督は「アワカ~」とたたえて、笑顔でハグする場面もあった。

2月25日福岡大との練習試合後、阿波加(背番号21)はペトロビッチ監督にハグされる(撮影・保坂果那)

2月25日福岡大との練習試合後、阿波加(背番号21)はペトロビッチ監督にハグされる(撮影・保坂果那)

GKの絆

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スポーツ

保坂果那Kana Hosaka

Hokkaido

北海道札幌市生まれ。2013年から高校野球などアマチュアスポーツを担当し、2016年11月からプロ野球日本ハム担当。
2017年12月から北海道コンサドーレ札幌担当。冬季スポーツの担当も務め、2022年北京五輪ではノルディックスキー・ジャンプや複合を取材。