【札幌レター〈57〉】キム・ゴンヒ復活へ 深井一希が語る素顔

北海道コンサドーレ札幌FWキム・ゴンヒ(29)の復活が待たれる。今季は持病のグロインペイン症候群で1月のキャンプからリハビリスタート。私が見たチーム唯一の外国人FWの姿、仲が良いMF深井一希(29)が語る素顔を紹介する。

サッカー

◆金健熙(キム・ゴンヒ) 1995年2月22日、韓国・全州市生まれ。2002年W杯日韓大会を見て、翌年の小学2年からサッカーを始める。2016年に韓国1部水原三星入りし、2019年尚州尚武に期限付き移籍。2020年古巣に復帰。Kリーグ通算99試合20得点。韓国代表歴はU-20、U-23、A代表。J1通算28試合4得点。186センチ、82キロ。両利き。好きな日本食はすし。

別メニューでランニングするキム・ゴンヒ(撮影・保坂果那)

別メニューでランニングするキム・ゴンヒ(撮影・保坂果那)

もどかしい気持ち

3月2日第2節アウェー・サガン鳥栖戦が行われた駅前不動産スタジアム。私は記者席でパソコンを開き、DAZNで映像を再生しながら試合を見ていた。失点の場面でスロー映像を確認していると、後ろから視線を感じた。1段上の席で観戦していたベンチコート姿のキム・ゴンヒだった。机から体を乗り出し、私のパソコンの画面をじっと見つめて、唇をかみしめていた。目が合うと、ペコリと会釈してくれた。

取材に応じるキム・ゴンヒ(2024年4月1日撮影)

取材に応じるキム・ゴンヒ(2024年4月1日撮影)

1月の沖縄キャンプ初日、姿がなかった。検査などで遅れて合流した。ピッチから外れて、別メニューの日々。そのまま開幕を迎えた。2022年夏から札幌に加入し、昨季は開幕スタメンを勝ち取ったが、苦しい3年目のスタート。

「サッカー選手がサッカーを出来ないのはもどかしさがある」

はやる気持ちを抑えて、回復優先の道を選んだ。本来の力を発揮するためだ。キム・ゴンヒを長年苦しめるグロインペイン症候群(股関節痛)。韓国時代から痛みに悩んでいた。昨季も発症し、だましだましプレーを続けたが、パフォーマンスが上がらなかった。

「しっかり治さないと」

毎朝、8時ごろにクラブハウスに到着する。他の選手の集合時間より1時間以上早い。岩佐誠一アスレティックトレーナー(39)によるマッサージなどのケアを入念に行っている。「体のバランスを調整して改善することで負担が掛からないような治療法」(岩佐トレーナー)という。リハビリ方法を聞いていると、キム・ゴンヒからチームメートのストイックさが明かされた。

「僕が来るのは8時くらいだけど、スゲさん(GK菅野孝憲)は7時半くらいに来ている。いつも勝てない」

常に100%の準備を怠らないベテランの姿は刺激になる。

福岡戦でボールを止める菅野(2024年2月24日撮影)

福岡戦でボールを止める菅野(2024年2月24日撮影)

深井に見せる一面

支えがいる。MF深井一希(29)は常に気に掛けてくれる存在だ。2023年夏から一緒に過ごす時間が増えた。同じ韓国出身のGKク・ソンユン(29)が京都サンガに移籍したタイミングだ。母国語で気兼ねなく話せた相手がいなくなり、異国で孤独に奮闘するキム・ゴンヒの力になろうとした深井は、当時「ソンユンもいなくなり、寄り添ってあげられれば。元々外国人選手と一緒にいるのは僕にとっても楽。そこまで言葉が通じず、心と心で会話するから」と話していた。

並んでランニングするキム・ゴンヒ(左)と深井(2023年8月撮影)

並んでランニングするキム・ゴンヒ(左)と深井(2023年8月撮影)

今年の沖縄キャンプ中の宿舎で同部屋となった。かなり打ち解けた。昨年まで札幌に所属していたGK松原修平(31=水戸ホーリーホック)の夫人に教わっていた日本語が上達。「キモい」と悪口を言いながら、じゃれ合うようになった。深井に見せる一面を明かす。

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スポーツ

保坂果那Kana Hosaka

Hokkaido

北海道札幌市生まれ。2013年から高校野球などアマチュアスポーツを担当し、2016年11月からプロ野球日本ハム担当。
2017年12月から北海道コンサドーレ札幌担当。冬季スポーツの担当も務め、2022年北京五輪ではノルディックスキー・ジャンプや複合を取材。