【イチロー大相撲〈33〉】大徹が退職、今だから明かせる5つの話
元小結大徹の湊川親方(67)が、6月30日付で日本相撲協会を退職した。
これを機にインタビューに応じ、角界での思い出を語った。
エピソードが豊富な個性派だけに、当欄では「今だから明かせる5つの話」を紹介する。
大相撲
湊川忠晃(みなとがわ・ただみつ)本名・南忠晃。1956年(昭和31年)10月29日生まれ、福井県大野市出身。二所ノ関部屋に入門し、中学在学中の1971年名古屋場所、南のしこ名で初土俵。1976年名古屋場所から、大徹(だいてつ)に改名。1980年初場所新十両、1983年新入幕。デーモン閣下のラジオ番組「オールナイトニッポン」で取り上げられたことがきっかけで人気に火が付き、番組にゲスト出演したこともある。金星1個、最高位は小結。1990年秋場所限りで引退し、年寄「湊川」を襲名。2021年10月の65歳の誕生日をもって日本相撲協会の定年となったが、再雇用により参与となった。2024年6月30日付で退職。現役時代は193センチ、133キロ。
湊川親方退職の発表は、日本相撲協会からのメールで知った。
湊川親方は65歳で定年を迎えた後、再雇用制度を用い、「参与」として協会に残っていた。再雇用の期限である70歳までは、あと2年以上あったが、後進に道を譲ったかたちだ。
私は湊川親方とゆっくり話したことがなく、聞きたいことが山ほどあった。せっかくの節目なので、インタビューをお願いした。
7月上旬、親方の自宅近くの東京都内の駅で待ち合わせた。
親方は路線バスでやってきた。あいさつをかわして、近くのデニーズへ。
身長193センチの巨体は迫力がある。店に向かう階段を上る。親方の後ろをついていくと、1段違うだけで、私の目線は親方の腰より下になった。
大徹。陽気な個性派。
エピソードは尽きないため、当欄では5つに絞って紹介する。
大徹の魅力はいくつもある。高身長に加え、長く太いもみあげはインパクトがあった。
―なぜ、もみあげを伸ばしていたんですか
「ひげを剃っていると、もみあげって、だんだん左右がそろわなくなる時があるんだよね。だんだん合わせているうちに長くなってきた。怖くてそり上げられないから、だんだん長くなってこうなった」
―合わせるうちに、だんだん上がっていくもんじゃないですか
「そこまでしたくないから、怖いから、ここでやめると、だんだんちょっとずつ伸びていく」
―大徹関は個性的なルックスでも人気がありましたね
「昔の侍みたいなこと言われたもんね。野武士みたいなさ」
―親方、髪の量も多いですね
「うん、真っ白だから。現役時代ね、もう白かったんですよ。だから現役時代からもう染めてたの」
―え! いつごろから白かったんですか
「もう家系が、ウチの家系がお袋も親父も白かったから。ちょんまげを結って白髪が混じっているとさ、弱々しくなる。だから、幕下のころからかな、染めてたの」
―床山さんにやってもらうんですか
「いやいやいや、パーマ屋に行くの。洗ってもらって、油を落として、また洗ってもらって。で、パーマ屋で染める」
大徹の唯一の金星は、横綱千代の富士から挙げた。1985年名古屋場所2日目、東前頭4枚目の大徹が、千代の富士をうっちゃりで破った。
千代の富士は30歳になったばかり。直前の夏場所で12回目の優勝を飾っていた。優勝回数は最終的に31回まで伸びるが、このころは千代の富士の全盛期でもあった。大徹は千代の富士と通算6回対戦があり、唯一の白星だった。
―どういう相撲だったか覚えてらっしゃいますか
「立ち合い低く前みつを取られて、オレはもうダメだと思った。千代の富士さんがわっと出てきたところを、土俵際でふぁーっと振ったんですよ。そうしたら(千代の富士の)足が先に出た」
―今となってはどういう思い出ですか
「やっぱ、時の横綱で一番強かった人に勝てた。金星は金星です」
―周囲の方々も喜んでくれたのでは
「そうですね。でも、その時の二所ノ関親方(元関脇金剛)が、この一番に勝てば10万円をやる。その代わり負けたら、いくらだったかな、5万円か3万円を取るって言っていた。勝つ要素がないから、『嫌です』って断った」
―10万円ではなく、100万円という説もあります。ウィキペディアでは100万円になっていますよ
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1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。
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