パンを好んで食べる力士 一山本はなぜ強くなったのか? 経歴も食も考え方も異色

朝稽古の後に、白米ではなくパンを好んで食べる力士がいます。

幕内力士の一山本(31=放駒)は、ちゃんこ鍋ではなくトーストを食べます。それで体重を維持できるのでしょうか? 強くなれるのでしょうか? 公務員出身の異色力士は、食事に対する考え方も「異色」でした。

大相撲

◆一山本大生(いちやまもと・だいき)本名・山本大生。1993年(平成5年)10月1日生まれ、北海道出身。小2から相撲を始める。北海道・大野農高から中央大学へ進学し、4年時に全国学生選手権で個人16強。卒業後は北海道福島町役場に就職し、教育委員会に配属された。23歳で新弟子検査を受検。元大関若嶋津の二所ノ関部屋に入門。2017年初場所初土俵、2019年名古屋場所新十両昇進、2021年名古屋場所新入幕。師匠の定年により、2022年初場所から元関脇玉乃島の放駒部屋所属となった。最高位は西前頭4枚目。188センチ、156キロ。

4枚切りの食パンを手に、笑ってしまう一山本

4枚切りの食パンを手に、笑ってしまう一山本

なぜパンが好き?

大盛りのどんぶり飯を、かっくらう。みんなで鍋を囲み、豪快に盛り付ける。力士の食事といえば、こういうイメージかもしれない。

一山本は、「パン好き」を公言している。なぜパンなのか。

―一山本関は、どんなパンが好きですか

「食パンが好きなんです」

―なぜお米ではなくパンなのでしょうか

「子供のころ、朝食はパンを食べる家庭だったんです。母親も働いていて、作るのが大変でしたから」

―食パンをどうやって食べていますか

「トーストです。実家にいた時は8枚切りでしたが、今は4枚切りです」

―4枚切り! 分厚いですね。4枚切りって売ってますかね

「意外とスーパーにはありますよ。駅前にもパン屋があります。1斤買って、切ってもらうこともあります」

―食べ方をもうちょっと詳しくお願いします

「焼いてからバターを塗って、いちごジャムをつけて食べます。たまにブルーベリー(ジャム)もうまいですね」

―家にトースターがあるんですか

「前はオーブンで焼いていたんですが、ついにバルミューダを買いましたよ」

―いいですね。ウチもバルミューダです。焼く前にちょっと水を入れますが、我が家はだんだん入れる水の量が適当になってます。関取はお好みの焼き加減はありますか

「結構焼いた方が好きかも。表面がカリッとして、中がふわっとしているのが好きです」

―好きなパンのブランドはありますか

「高級食パンもおいしいけど…、超熟かな」

―庶民的ですね…。トーストを食べる時の飲み物はどうしていますか

「コーヒーですね。豆を買ってきて、豆からひいてくれるコーヒーメーカーでいれます」

―パンはいつ食べていますか

「朝稽古が終わって、それからパンを食べますね」

一山本が焼けばパンも「ちゃんこ」

ここで少し、事情を補足する。

力士の食事は、基本的に1日2回。朝起きて、まず朝稽古に臨み、稽古後に食事。2回目は、夜になる。

近年は、あえて稽古前に補食する部屋も出てきた。太りたい力士は、夜食を取る場合もある。

力士が作る料理はすべて「ちゃんこ」。なので、一山本が焼いたパンも「ちゃんこ」になるのだが、稽古後にパンを食べる力士は珍しい。

幕下以下の若い衆は相撲部屋に住んでいるため、ちゃんこ番が作った料理をみんなで食べる。

十両以上の関取は、どうするか。部屋や個人の考え方によって異なる。部屋のちゃんこを食べる関取もいれば、自宅に戻って1人もしくは家族と食べることもある。

十両昇進が決まり、一山本(中央)は二所ノ関部屋の仲間たちから万歳の祝福を受けた(2019年5月29日撮影) 

十両昇進が決まり、一山本(中央)は二所ノ関部屋の仲間たちから万歳の祝福を受けた(2019年5月29日撮影) 

相撲部屋において、若い衆は大部屋で生活する。関取になると、個室を与えられる。そのまま個室に住んでもいいが、結婚すれば別に住居を構える。独身でも師匠の許可があれば、独立できる。一山本はこのパターンだ。

再び、一山本の話に戻る。

―夜の食事はどうしていますか

「夜は基本的に自分で作ります」

―例えばどんな料理を

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スポーツ

佐々木一郎Ichiro Sasaki

Chiba

1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。