ウクライナ出身の安青錦は、なぜ日本語の上達が早いのか?
ウクライナ出身の安青錦(あおにしき、21=安治川)は、史上最速となる所要12場所(付け出し除く)で新三役に昇進しました。
まだ初土俵から2年ですが、流ちょうな日本語を使いこなします。
なぜこれほど日本語がうまいのでしょうか? 安青錦に聞きました。
大相撲
◆安青錦新大(あおにしき・あらた)本名・ダニーロ・ヤブグシシン。2004年(平成16年)3月23日、ウクライナ生まれ。7歳から相撲を始め、2019年世界ジュニア選手権3位。レスリングも経験し、国内大会110キロ級優勝。2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、同年4月に来日。関西大学などで練習し、同年12月に安治川部屋の研修生となった。2023年名古屋場所の新弟子検査を受検し、同年秋場所初土俵。2024年九州場所新十両、2025年春場所新入幕。同年秋場所新小結。金星1個、三賞は敢闘賞2回、技能賞1回。182センチ、140キロ。
支度部屋での言葉
7月の名古屋場所中のことだった。
取組後の支度部屋で、安青錦は右目付近の青あざについて聞かれると、こう答えた。
「男前になりました」
冗談を交えた、気の利いた受け答えだった。
優勝争いをしていた終盤戦、「優勝は意識しますか」と聞かれると「気にしていないと言ったら、それはウソと思う」と答えた。
「はい」か「いいえ」での返答ではない本音を口にした。
どちらも決して簡単な言い回しではない。
夏巡業の終盤、「気にしていないと言ったら―」の言葉遣いについて、安青錦に聞いた。これは、難しい表現ではないのか。
安青錦は「自分の頭にあったことをそのまま伝えただけで、それになっちゃっただけ。あんまり意識して言ってるわけじゃないです」と説明してくれた。
ウクライナの言葉でも、似たような言い方があるのだという。
来日したのは、2022年4月12日。親交のあった神戸市の山中新大さんの自宅で居候しながら、関西大などで稽古をしていた。年末に安治川部屋に入門するまで、日本語学校に通った。
日本語学校で語学が上達したのだろうか。
「ちょっとだけです。週2回を何カ月か行きました。相撲部屋に入ってからが一番勉強になりました」
入門当時は、あまり話せなかったという。
新弟子となり、どうやって上達していったのか。
「みんなと会話して、分からないところは聞いて。なんかしゃべることは恥ずかしくなかったんで、間違えてもいいから、いくらでも、できるだけしゃべった方がいいなと思ってしゃべりました」
間違えてもいいから、恥ずかしがらずに話す。分からないことは遠慮なく聞く。語学上達のためのセオリーを、安青錦は実践していた。
そういえば、名古屋場所でも、そんな場面があった。
5日目、霧島に内無双で勝った。この場所で2度目の内無双だった。
「内無双を決めるためのコツはなんですか?」と聞くと、安青錦は「『コツ』ってなんですか?」と聞き返してきた。
知らない言葉だからといって受け流すわけでなく、知ったかぶりもしなかった。
上達の理由
もちろん、日本語を話せるようになるために角界入りしたわけではない。
「強くなりたいんで。言葉を知ってたら、もっと早く強くなれるんで…。やっぱ、親方が言っていることが分かんないとだめだから。会話もあんまできないし、自分が伝えたいことも伝わらないし」
強くなりたい。親方の言っていることを理解したい。この気持ちが人一倍強かった安青錦は、そのために言葉を覚えていった。
戦火を逃れてやってきた日本。力士としてやっていくために必死だった。
上達の理由は、ほかにもある。
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1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。
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