敗戦の中に、京都勢の絆を見た。

 大方の予想通りに稲垣裕之(38=京都)が村上義弘(41=京都)を引っ張って先制。村上も思いに応えて番手まくりで武田豊樹を封じた。だが、その上を平原康多-浅井康太に行かれてしまった。村上は5着、稲垣は9着に沈んだ。

 レース後、稲垣は目に涙を浮かべて「僕の14年間を、この1レースで表そうと思いました」と思いを吐露した。デビュー以来常にそばにいたのは村上だった。GPの舞台に立てたのは、村上のおかげだ。感謝の思いと、何としても勝たせたい、そんな思いを大観衆の前で表現できた。満足感と悔しさが、稲垣の涙だった。

 思いは確かに村上に伝わっていた。「稲垣も頑張ってくれた。自分たちができることはしっかりやったと思う。上位に入った人たちが強かった」。レース後とは思えないほど穏やかな表情で振り返った。それは稲垣とともにグランプリを走れた満足感だった。「何か興奮しましたね。やっぱりこの場所ですよね」と、子供のような笑顔で語った。負けはしたが充実感に満ちあふれていた。

 稲垣が「この舞台で、武田さんをたたいて主導権が取れたのは次につながると思います」と言えば、村上も「近畿のためにも、こういう経験は次につながるし、つなげていかないといけない」と口にした。GPで絆を確かめ合った京都勢。16年も他地区をリードする熱い連係を見せつける。