驚異、いや当然なのか!?
寛仁親王牌は脇本雄太が優勝。オールスターに続く2冠をG1連続優勝で決めました。
私にとっての記者の師匠・栗田先輩が書いたように、これはあくまで通過点と思うくらい強かった。
実は決勝当日、某・丸刈りがトレードマークで、競輪界の未来を担う記者に、私は雑談がてらこんな話をしてしまったのです。
「ワッキーの上がり8秒8って、驚異的なのかな?」。
前橋のバンクレコードタイ記録である上がりタイム(半周167・5メートル)8秒8が素晴らしい時計であることに、異論はありません。準決の脇本の走りを見て、すぐに関係者に上がりタイムを確認しに行ったくらい、鳥肌が立ちました。
ただ、世界を目指すワッキーは「タイ(記録)かあ」と悔しそうに苦笑い。その後、成績表を見つめて「8秒8? まあまあやね」と、さも当然のように言ったのです。きっと「もっと出るよ」と言いたかったのでしょう。これが頭から離れずに私の口から出てしまったのです。
- 上がり8秒8を示す成績表(撮影・山本幸史)
もちろん競輪の上がりタイムと、勢いをつけて走るフライングタイムトライアルは単純比較できませんが、今のナショナルチームメンバーは200メートルで10秒前半を出すのは当たり前。深谷知広が伊豆ベロドロームでの大会で10秒を切る時計を連発するのを見てきました。
前橋ドームでの8秒8は、200メートルで約10秒5に相当。これでも国内の400バンクの多くの記録は更新されます。
自転車競技のスプリント予選では10秒を切らないと通過すらできない可能性もあります。彼らの話を聞くと「驚異」よりも「きっと、バンク新記録を出してくれる」という大きな期待を抱いてしまうのです。
さて、前述した質問について、競輪記者ブログの先駆けの彼は、私に「は? コイツ、何を言っているんだ?」という顔で、こう答えました。
「驚異的でしょう。だって、ワッキーは初日10秒0、ローズCは9秒4、準決は8秒8で毎日コンマ6秒ずつ縮めてきた情報を読みました。決勝は8秒2で勝ちます!」。君、それ、ハロン9秒8や…。
でも、それほどの可能性を秘めていることを示してくれたシリーズでした。さあ、今月からW杯が開幕。我々の驚異を当然のように見せて欲しい。頑張れワッキー、頑張れブノワジャパン! 【山本幸史】