今年も、女子の短期登録選手がガールズケイリンを盛り上げている。4月19日に始まった豊橋競輪はロリーヌ・ファンリーセン(31=オランダ)が制し、初参戦のマダリン・ゴドビー(26=アメリカ)は決勝3着だった。弥彦競輪ではマチルド・グロ(19=フランス)が優勝。そして22日からナターシャ・ハンセン(29=ニュージーランド)が平塚競輪に出場する。

今回はその4選手を分析する。昨年5月の【敢闘門】と同じように、JKAから女子短期選手のメカニックを委託されている鬼原積(きはら・つもる)氏にチェックをお願いした。

今年の選手との帯同は豊橋競輪からスタートした。前検日に検車場に着くと、「競技の大会でもよく話すんだよ」とファンリーセンとゴドビーに声をかけ、早速2人の自転車を組み立てる。開催が始まれば2人と話し、自転車の調整はもちろん、レース運びのアドバイスもした。

鬼原積氏(中央)が前検入りしてロリーヌ・ファンリーセン(左)、マダリン・ゴドビーと笑みを見せる
鬼原積氏(中央)が前検入りしてロリーヌ・ファンリーセン(左)、マダリン・ゴドビーと笑みを見せる

豊橋ではファンリーセンの変化に驚いた。「強いという以上に、レースがうまくなっている。今年で3年連続でしょ。経験を生かしている。競技の展開はずっと早いペースで流れていくけど、ガールズは何度も緩む。この違いが分かり、包まれないように気を付けて、後手になればすぐいく。2日目に逃げ切って、本人は『試した』と。あの先行ができれば、なかなか負けない」と話した。

W杯ケイリンを2度制したゴドビーが、アメリカ女子で初めてガールズに参戦している。やはり適応力が高い。管理棟に入れば外部と接触できない状況や、選手紹介から時間を置いてレースに挑む流れに順応した。ガールズ用の自転車に乗ったのは、4月上旬に来日してから。ごく短期間で、しかも慣れない400メートルバンクに挑んだ。「前検日は緊張していたけど、走りだしたら堂々としていた。競技大会は1日に何回も、数種目を走る。競技とガールズはレースに臨むテンポが違うから、平気かと思ったら、しっかり踏み切っていた。本人も『1日1走で楽』と頼もしい。ただ、組み立ては工夫しないと。予選は勝てたが、決勝みたいに前の方からあおりを受けると踏めない。負けて悔しそうに『仕方ない』と言っていた。ロングスプリントができないからなあ。ただ、研究熱心でファンリーセンにいろいろ教わっていたから、次のレースではもっと早く仕掛けそう」。

ゴドビーの自転車を整備する鬼原氏
ゴドビーの自転車を整備する鬼原氏

豊橋と並行して、弥彦を戦ったグロの動向も見逃さない。「今年は一番強いステファニー・モートン(28=オーストラリア)の欠場は残念。代わってのエースはグロ」と、その実力を説明する。初参戦の昨年は初戦の立川で決勝進出を逃したが、以後5場所は優勝3度を含むオール3連対だった。「あの立川で初めて400バンクを走った。予選で負けて『どうすればいいの?』と聞くから、とにかく前に出ることが大事と返した。最終日に1勝して、こつが分かったみたい。今年はパワーアップして踏む距離が伸びた。弥彦は、バックすぎは全力じゃなかった。ずっと流して、並ばれたらまた踏む。ゴール前にハンドルを投げてない。これについては去年も聞いたんだけど、『ふふっ』って笑ってごまかされた。ハロンで10秒6を出すぐらいだから自信があるんだろう」。

フランス期待のマチルド・グロ
フランス期待のマチルド・グロ

ハンセンは3年連続3度目の参戦。一昨年は4場所で優勝ゼロから、昨年は5場所で3度優勝を含むオール2連対と本領を発揮した。「実力はファンリーセンと同じか、ちょっと下と考えていい。2人は、日本人なら小林優香が勝ったり負けたりになる。去年はガールズの自転車に慣れたのが大きい。競技のハンドルはカーボン製で、ガールズはアルミ合金。サドルが変わればフォームにも影響する。それと、レースで流れを見過ぎない。仕掛けが早くなって、いい結果になっている」。

今日から平塚競輪に挑むナターシャ・ハンセン
今日から平塚競輪に挑むナターシャ・ハンセン

昨年【敢闘門】で、鬼原氏は初戦でつまずいたグロの快進撃を予告した。鋭い眼力による評価はグロが実力NO・1で、ファンリーセン、ハンセンの順。経験不足のゴドビーが追いかける形という分析だった。

【野島成浩】