東京五輪の開幕まで10カ月を切った。14年にガールズケイリンでデビューし、2年目にはタイトルを総なめにしていた小林優香(25=福岡)が「東京五輪で金メダルを取るのが私の夢」と宣言。ナショナルチーム入りしたのが3年前のことだ。そして現在、五輪出場が有力な状況にいる。

この3年間、競輪と競技と「二足のわらじ」をはいていたが、競技寄りに大きくかじを切っていた。ところが先月末に「ガールズグランプリ2019トライアル」(11月19~21日・小倉)出場が発表された。優勝した15年以来4年ぶりのガールズグランプリ出場を目指すことになったが、彼女の心を突き動かしたものは何だったのか。17日に開幕するアジア選手権(韓国・鎮川)を前に、その胸中を日刊スポーツに明かした。【取材・構成=松井律】

今日17日からアジア選手権に臨む小林優香
今日17日からアジア選手権に臨む小林優香

私がナショナルチームに入って3年がたちました。この間、ガールズケイリンのレースには年間で数えるほどしか出ていません。

それでも、私の職業は競輪選手。それを忘れたことはありません。理解していただくのは難しいかもしれませんが、自転車競技で五輪のメダルを取るのはあくまでも「夢」で、私にとって競輪と競技は全く別物なのです。

昨年のKEIRINグランプリは伊豆のドームで見ていました。同じチームの脇本雄太さん、新田祐大さんが出ているのに、なぜ私はここにいるのだろう?  同じスケジュールで同じトレーニングをしているのになぜ?  そんなモヤモヤとした感情が湧いてきました。

1年のほとんどを伊豆で過ごしていると、私は競輪ファンに忘れられてしまうのでは? こんな孤独感に襲われることがあります。この状況を覚悟はしていましたが、オフの時間にガールズのレースを見ていると、同期の仲間がとても恋しくなるのです。

だからこそ、出られるレースには出たい。しかも、トライアルは地元九州のファンの前で走れる。そこで勝てば、きっと私を思い出してもらえる。そんな思いからトライアルに出たいと強く願うようになりました。

チームの首脳陣に思いを伝えたところ「W杯の直前にレベルの高い真剣勝負の場で走ることはプラスになるだろう」と出場を後押ししてもらえました。

普段は山で過ごしている小林優香が熱海の海を堪能
普段は山で過ごしている小林優香が熱海の海を堪能

ガールズケイリンは年々レベルアップしています。その中で昨年、女王になった同門の児玉碧衣は本当に強くなりました。勝ち続けなければいけない今の彼女の立場や心情は、よく分かります。今年、私が唯一勝てなかったオールスターのガールズドリームレースも、彼女がいい走りをしたからだし、もちろん今ではライバルの1人と認めています。

ただ、私には常に意識し、目標にしている選手がいます。それは同期の奥井迪さん。私は競技では2周以上逃げられるのに、競輪ではできません。それが競輪の奥深さでもあるのですが、奥井さんは私のできないことをやり続け、選手からもファンからも認められています。だから、私の中では奥井さんが頂点。次が小林優香で、碧衣はその次ですね(笑い)。

小林優香は厳しいトレーニング期の最中だが少しだけリラックス
小林優香は厳しいトレーニング期の最中だが少しだけリラックス

17日からアジア選手権が始まります。来月の小倉トライアルの翌日には香港に飛び、ニュージーランド、オーストラリアとW杯を転戦します。ジャパントラックカップ(小倉)では、リ・ケイシ(香港)に僅差で敗れました。小倉の借りは香港で返そうと燃えています。

今はもう、世界との距離はあまり感じていません。スプリントはまだ成長途上ですが、ケイリンではメダルを取れる位置にいると信じています。ここまで来られたのも全て競輪のおかげ。競輪がなければ、五輪を狙うこともできませんでした。

だから、小倉のトライアルではファンの皆さんの前でベストを尽くします。もちろんガールズグランプリにも出て勝ちたい。グランプリは、その1年で一番しっかり準備をしてきた人が勝てるものなのですから。(小林優香)