この場に立ち会えて本当に良かった。
ガールズケイリン10周年を記念して平塚競輪場で行われた初の12R制オールガールズ開催。1期生がこの大会の重要性を唱え、後輩たちもその魂を共有した。「入場1万人、売り上げ10億円」をスローガンに掲げ、82人のガールズ選手が本気を見せた。
前検日の主役は、1期生だった。中村由香里(41=東京)が全選手を鼓舞するメッセージを打ち出せば、加瀬加奈子(42=新潟)は、引退したばかりの同期・田中麻衣美のフレームで参戦という粋なストーリーで観客を引きつけた。
オープニングセレモニーは、ガチガチに緊張した小林莉子(29=東京)のあいさつで始まった。ガヤでも飛ばしてリラックスさせてあげたかったが、まるでスキャットマンのようにまくし立てるスピーチの前に、そんな隙間はなかった(失礼)。
一番の名場面は、日本競輪選手養成所長の滝沢正光所長が花束贈呈に現れ、加瀬と熱い抱擁を交わしたシーン。この時ばかりは、ファンも選手も、爆笑の渦に包まれた。
初日からハイレベルなレースが続いた。ナショナルチームが持ち前のスピードを発揮すれば、国内組も主力選手がきっちり結果を出す。本命サイドの決着が続き、初日の3億2000万円の売り上げに、関係者は安堵(あんど)した。
2日目のハイライトシーンは、準決A10Rだ。奥井迪(40=東京)が先手を取り、太田りゆ(27=埼玉)がまくりで襲いかかる。手に汗握る攻防を奥井が制すと、場内のボルテージは最高潮となった。
このレースを見て「気合が入った」と言う児玉碧衣(27=福岡)は、2日連続でメインの大役を果たした。佐藤水菜(23=神奈川)も連勝で勝ち上がり、V決戦に向けて、周囲の期待は大きく膨らんだ。
最終日の朝、1期生に後輩が、全員で感謝の思いを伝えたという。中村は「私たち1期生だけでは、ここまで来られなかった。みんなが一致団結して質の高いレースを見せられた」と胸を張った。
中村が「今回の決勝はガールズGP以上のレースになる」と予言したAB2つの決勝は、フィナーレにふさわしいものだった。
B組は、今年急成長を遂げた柳原真緒(25=福井)が、ナショナルチームの小林優香(28=福岡)梅川風子(31=東京)のまくり合戦の上を直線鋭く強襲した。
A組は、決戦前から火花を散らしていた児玉と佐藤がまさかの同着優勝。映画やドラマでも出来過ぎの結末が、現実に起こった。ちなみにガールズ決勝での同着優勝は、これまで10年間でたった1度しかない。
3日間の売り上げは、11億円を突破した。「持って5年」と色物扱いを受けていたガールズケイリンは、10年間で必要不可欠なコンテンツとなった。
地元の尾崎睦(37=神奈川)は言った。「この大会を開くにあたって、多くの裏方さんが大変な思いをして準備してくれた。私たち選手の頑張りが恩返しになる」。この言葉を体現してくれた選手、そして全ての関係者に感謝したい。すてきな初夏の思い出をありがとう。【松井律】