競輪の神様は、時に粋な計らいをする。

3年前、中本匠栄(33=熊本)は当地で落車して頸椎(けいつい)を骨折し、選手生命が危ぶまれた。回復はしたものの、恐怖がぬぐえず、今大会の前まで伊東競輪のあっせんを避けてきた。

「どうしても、けがのイメージが残ってしまった。でも、ビッグレースを走るチャンスをもらったので、3年ぶりに伊東を走ることを決意しました」。

準決11Rは、主導権を握った清水裕友の番手に飛び付くと、その上をまくった脇本雄太を必死に追走。2着で初めてのビッグレース決勝進出を決めた。くしくも同じバンクで天国と地獄を味わった。

決勝12Rが行われる21日は、けがをした日からちょうど丸3年。困難を乗り越え、晴れ舞台にたどり着いた男は、ポスターの「伊東が愉しい」の文字を指さしてニッコリ笑った。