【大上悟・オレに任せろ】

 ◆12R:準決

 落車のダメージも鉄の意志を貫く男が乗り越えてみせた。2予最後の11Rは平原康多の独壇場だった。赤板で根田空史が2車で上昇して前を押さえると「位置取りだけは最低限やる」と即座に反応して3番手をキープ。最終バックからパワー全開でまくって番手の諸橋愛とワンツーを決めた。

 初日のメイン日本競輪選手会理事長杯の落車が、まるでなかったかのような縦横無尽の動きで不安を吹き払った。「体は右半身を中心に競走中も痛かった。明日? どれだけ回復するのかも分からない」。苦悶(くもん)の表情でユニホームを脱ぐとアンダーシャツの右ひじ部分は血がにじんでいた。

 直前にナショナルチームの本拠地・伊豆ベロドロームに乗り込んで1周250メートルの超高速バンクでスピード特訓を積んだ。国内の競輪場では前橋は最大カント(傾斜)36度のバンク。「今までは壁に感じていた。それが普通の感覚でコーナーを走れた。初日の落車も、あまりにすんなり走れたので攻めすぎたのが原因」。ナショナルチーム勢の強さの源である木製バンクで進化への確信をつかんだ。

 準決は3分戦で地元の木暮安由が番手を固める。落車の不安を一蹴した平原のまくり連発だ。別線の先頭は竹内雄作、三谷竜生と強力だが、歴戦の平原が経験値で勝る。中団奪取からパワー全開で踏み出して木暮とワンツーだ。3連単は(2)=(7)から総流し。