平高奈菜のレースぶりを一言で表すならば「大胆不敵」がもっともふさわしい。とにかく恐れることを知らない。今なお語り草となっているのが、07年5月、地元丸亀でのデビュー節だ。6日間の成績が「不完走、転覆、6(着)、落水、6、6、6、6、6」。誰もが無事故完走を第一に走るデビュー戦にあって、3度の失格を喫した。多くのファンがあまりの破天荒な成績に衝撃を覚えるとともに、「末恐ろしい新人が出てきた」と思ったことだろう。

しかし、こんなことでへこたれる彼女ではない。その後も決して守りに入ることなく、攻めの姿勢を貫いて3年後にA級に昇格。11年には女子では2期(1年)先輩の平山智加(37=香川)に続き、2人目の最優秀新人の栄誉に輝いた。

小細工は一切なし。攻撃的な走りが最大の魅力だが、もろ刃の剣でもある。17年12月から18年4月にかけて3本のフライングを切ってしまい、180日間の休みを余儀なくされた。さらに20年6月の下関ではレース中のアクシデントで右腕の橈骨(とうこつ)と尺骨を折る大けがを負うなど、順風満帆なレーサー人生とは言えない。それでも、決して暗さを見せない。多少の回り道があっても、何事もなかったのごとく大舞台に戻ってきた。このハートの強さが彼女を支える。

こう書いていると、いかにも向こう気の強い女子かと思われがちだが、それはあくまでレースでのこと。陸(おか)の上ではいたって気さくな素顔をのぞかせる。時折みせるキュートな笑顔に魅せられる関係者は少なくないはず。また、自身のSNSでも積極的に発信を行い、ファンとの交流を深めている。SGオールスターは3年連続7回目の出場。特に今回は1万3088もの得票数で、自己最高となる6位で選出された。いかにファンに愛されるレーサーであるかがお分かりのことだろう。

今回、準優勝戦11Rでは大上卓人(31=広島)との接戦に競り勝って2着に入り、女子では4人目となるSG優出を決めた。優勝戦はボートレースで最も不利な枠とされる6枠で臨むが、彼女のことだ。無事故完走で終えたいとは思っていないだろう。1着か6着かのピンロク勝負に打って出るはず。とにかく男子相手にひるむことなく大胆不敵に走るのみ。その先には3月大村クラシックでの遠藤エミ(34=滋賀)に続く、女子2人目のSG制覇が待っている。偉業に向かって、限界を超えろ!