<ワールドカップ(W杯)ロシア大会:韓国2-0ドイツ>◇1次リーグF組◇27日◇カザン

 ボールが流れるように動かない。初戦のメキシコ戦でも感じたが、韓国戦でも攻撃がノッキングしていた。ノッキングとはサッカー用語で「ランとパスコースがずれる、選手の動きがバラバラ、パスコースが見つからずに無駄にドリブルする、手詰まり状態」のことをいう。ボール保持率70%でも、これでは試合を支配したとは言えない。

 優勝した4年前は、主力11人中6人がBミュンヘンの選手だった。GKとDF2人、MF2人、FW1人とバランスが良かった。当時、同チームは、パスサッカーのグアルディオラ氏が監督をしていて、レーウ監督は、それにちょっと手を加えて、代表に落とし込めば良かった。しかし、今大会の韓国戦では、Bミュンヘン所属はGKとDF3人だけで、残る7人は、それぞれ所属が違う。能力が高くても、普段慣れているメンバーではないため、連係面でスムーズではなかった。

 MFクロースのパスミスが多かったのも原因の1つ。韓国戦でのパス成功率は91%だったが、本来は1試合通して1、2回しかパスミスしない選手。スウェーデン戦の失点も彼のパスミスからだった。チームとして前に行きかけた時に、攻撃の起点となるところで、ミスが出れば、チーム全体のバランスが崩れる。

 以前のドイツサッカーは、堅守速攻だった。最前列にゲルト・ミュラー、クリンスマン、ビアホフ、クローゼのような強烈なFWがいた。南米の個人技をみんなが必死に守って、耐えてから最前線にボールを送る。これがドイツの得点パターンだった。しかし4年前のブラジル大会ではパスをつなぐポゼッションサッカーで世界一になった。今回は? ポゼッションも中途半端で速攻もはまらず、絶対の得点パターンがなかった。

 4年前に世界王者になり、昨年は若手主体でコンフェデレーションズ杯も制したことで、どこか慢心があったのかもしれない。チーム全体のリスクマネジメントが甘くて、メキシコ戦では攻撃時にDFフンメルスの守備準備が甘くて失点している。スター選手を集めたが、過信から生まれた心の隙は名前だけでは埋められなかった。(日刊スポーツ評論家)