Jリーグは各チームキャンプも佳境です。新型コロナオミクロン株の影響もあり、依然としてちょっと物足りない2月になってしまっている状況かもしれません。なんとか開幕時、もしくは3月、4月には皆がスタジアムに足を運ぶことができるように、そしてあの熱狂を取り戻すことができるよう祈るばかりです。

そんな中、1月21日に大手動画配信サービスであるDAZNの月額料金の値上げが発表されました。現在DAZNは月額1925円ですが、これが2月22日から月額3000円に。また、初月無料のお試し期間もなくなるとのこと。DAZNはスポーツに特化した配信サービスということですが、DAZNでないと視聴できないコンテンツも少なくなく、また、突然の発表で、さらにこれが月1000円以上の値上げということでユーザー間では大きな動揺となりました。年間プランに関しても1万9250円から2万7000円への値上げとなるほか、年間プランの月払いプラン(こちらは年額3万1200円・月々2600円)が新しく登場することになります。

以前も述べたように、昨今フットボールのテレビ離れ(モバイルも含め)が進んでいます。試合を90分間通して見なくなってきていることが各国で懸念されており、特に10代・20代を中心とした若年層にそれが起こっています。クラブやリーグからすると、今後のファンの醸成というところに課題が出てきているという状況ではあります。その中での値上げですから、ますます若年層は離れてしまうのではないかと懸念されてしまいます。

DAZNのビジネス視点から見てみましょう。そもそもなぜドコモと大型契約を? ということになるわけですが、携帯キャリアのシェア率からすると、一目瞭然です。とある調査会社の調査結果では、2021年の時点で日本の携帯ユーザーの約40%近くがドコモ。KDDIは約30%前後で追随しており、ソフトバンクが25%前後。残りの5%が楽天などとなっており、この時点でDAZNは一番シェアの大きなところを捕まえにいったというのが見えます。

歴史的にドコモは法人に強く、この部分からも、法人での契約が見えない部分で多くあるとすれば、DAZNとしても契約者数の獲得が狙えると判断してもおかしくはありません。(法人で契約している端末で自由にプログラムを契約できるのかは別問題としてあるように感じますが…)

そのドコモは、報道によると約8000万件の契約があるそうです。仮にそのうちの半分が男性だとした場合、約4000万件となります。かなり大雑把な推測数字にはなりますが、このうち1%の40万件がDAZNと年間契約したとすると、下記の計算になります。


40万件×1925円×12カ月=92億4000万円


ドコモ契約者の男性の1%の方々が年間契約しただけで92億円の売上になるということですが、現在DAZNは野球も視聴可能で、そして海外サッカーにF1、NBA、NFLといった米国スポーツなども見ることができます。1%とはいわず、ドコモ契約者の男性の10%のシェアを取った場合、単純計算ですがそれでも924億円になります。

一方コスト面から見てみると、JリーグとDAZNは2017年から10年間、約2100億円の放映権契約を締結(20年に2017年から28年までの12年間で約2239億円という新たな放映権契約に変更)しており、年間で約186億円強となります。この規模がサッカーを含めて5競技ぐらいになることを考えたとしても約930億円。DAZNの売上規模からすると、DAZNはお得なお買い物をしているように感じます。Jリーグはもっと契約金を上げる交渉を仕掛けても良いのではないかと感じます。

ヨーロッパのビッグクラブの放映権の売上は全体の約30%を占めています。リーグのシステムにもよりますが、小クラブになるともっとこの放映権の売上比率は高まります。こういった現状からすると、アジアのトップに立つ日本の放映権はもっと価値を高く設定しても良いのではないかと感じます。アジアの国々とのビジネス活性化を鍵としているJリーグではありますが、放映権ビジネスが大きく左右することに間違いはなさそうです。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)