フランスに体調不良者が出ている。欧州各国リーグ戦の中での強行日程。スタジアムは空調完備だが、練習場など外は暑い。逆に、ホテルなど屋内は上着がいるほど冷えている。1次リーグ初戦からハイテンションの試合を続けてきて、体調万全なわけがない。

体への負担はアルゼンチンも同じだろうが、準決勝からの試合間隔が中3日と1日短いのも響きそう。さらに「インフルエンザ」など感染症だとしたら、広がることが心配だ。コンディション調整がカギになる。

大会前、フランスは厳しいと思っていた。バロンドールを受賞したエースFWベンゼマら負傷者が続出。前回大会で優勝に貢献したボランチのカンテとポグバも負傷で欠場した。大会のジンクス通り「連覇は不可能」なのかとも思った。

毎年行われる大会ならまだしも、4年は長い。選手は入れ替わり、成長する選手も衰える選手もいる。世界中からマークもされる。4年前に勝ったからといって、次に勝てるとは限らない。いや、4年前に勝ったからこそ、次は厳しい。

過去に例はある。38年にイタリアが、62年にブラジルが達成したが、遠い昔のことだ。当時は参加16チーム、今のように強豪国も多くはなかった。62年大会決勝のブラジル代表メンバーは8人が58年大会の決勝と同じ。負傷でペレは欠いたが、ほとんど同じチームで戦うことができたのだ。

ブラジルの連覇以降14大会、前回優勝国は苦しんできた。90年大会はアルゼンチンが、98年大会ではブラジルが決勝に進出したが、いずれも準優勝止まり。90年のアルゼンチンはマラドーナ中心に何とか勝ち上がったが、出場停止と負傷などでチーム状態は最悪。主力の半分を失う「史上最低の決勝戦」だった。

近年は戦術進化のスピードが速くなり、4年前のスタイルはすぐに過去のものになる。最近3大会の前回優勝国は、次の大会でそろって1次リーグ敗退。そう考えれば、今回のフランスは素晴らしい成績だ。前回から中盤の要のボランチなど半分のメンバーが入れ替わったが、戦力や戦術の充実度は前回以上にさえ思える。

心配なのは、決勝戦に臨むチームの状態だ。ベンゼマ欠場にも追加招集せず、初戦でDFのL・エルナンデスが負傷。使える選手は24人になった。控えだった選手の活躍で勝ち上がってきたものの、限界に近づいているのではないか。

スタメン9人を入れ替えた1次リーグ最終戦でチュニジアに負けたように、入れ替えがきかない選手も多いのが現状。特に前線の主力を欠いた時の戦力ダウンは明らかだ。フランスも、もちろんアルゼンチンも、ともに万全の状態で戦う決勝戦が見たい。大会を象徴するのは、やはり決勝戦のイメージだからだ。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)

クロアチアに勝利し笑顔を見せる、左からデパウル、メッシ、タリアフィコ、ディバラ(撮影・パオロ ヌッチ)
クロアチアに勝利し笑顔を見せる、左からデパウル、メッシ、タリアフィコ、ディバラ(撮影・パオロ ヌッチ)
W杯優勝国の次大会成績
W杯優勝国の次大会成績