Within a little head, great wit.
「小さな頭の中に大きな知恵」。故事成語で言うなら「山椒は小粒でもぴりりと辛い」。体は小さくても気性や才能が非常に優れていることの例えだ。山椒の実は料理を際立たせるアクセントとしてよく知られる。
サッカーの世界でも、攻撃のアクセントとなる「スパイス」なる選手に出くわす。明治大のMF高足善(1年=前橋育英)のプレーを見て、そんな「山椒の実」が頭に浮かんだ。
■関東大学リーグ新人戦で優勝
身長158センチ。大型化が進む大学サッカー界にあって、そのサイズは一際小さい。だが、ピッチに立つとそのサイズ感を忘れてしまうくらい、大きな存在となっている。
11月23日、関東大学リーグ新人戦(1、2年生対象)決勝。明大の高足は、早稲田大戦にトップ下の位置に入った。DFの間に顔を出して足もとにパスを引き出すと、細かなボールタッチで巧みにキープしつつ、テンポよく周囲の選手と連携していく。
相手を食い付かせてはフリックを使い、ボールを受け直してはドリブル、パスと変幻自在なプレーは冴える。中でも右サイドのニアゾーンを突いたショートパスは秀逸だった。早大DF陣にとってはやっかいな「山椒の実」だった。
この日は後半32分までプレー。得点やアシストはなかったが、その存在感は申し分のないものだった。チームも3-0と快勝した。
10番を背負った前橋育英3年でインターハイを制し、選手権などの全国舞台でも活躍している。もともとよく知られた選手だ。ただ、フィジカルが前面に出てくるアスリート化が進む昨今のサッカー界にあって、小さな選手が壁にぶつかるケースは多々ある。それだけに高足が大学に入って、さらに成長していることに好感を抱いた。
■「お前が一番伸びているぞ」
栗田大輔監督は自信を持ってこう話す。
「高校から大学に入って活躍している選手はいますけど、『高足、お前が一番伸びているぞ』って言いますね。間違いなく伸びている。運動量もあるし、その中で自分の体の小ささを感じさせないプレーをできている。そこに満足することなく、もう1個インパクトが出せる。あのサイズ感の中でもリーダーシップや存在感の出せるプレーをどれだけできるか、それがこの大学に来た意義だと思っている。今日もいいアクセントになってくれた」
指導する上で選手たちによく言う言葉が「いいアスリートになれ」だという。サッカーがうまいだけでなく、人間性、社会性の部分を磨くことにも腐心する。いいアスリートとは? 栗田監督はそのココロをこう説く。
「技術が同じ10人がいても、10人が10人とも成功するとは限らない。次のステージに行ったら自分を表現する力だったり、そこの考え方とか、心の持ち方とか、自分の武器を出せるという能力は鍛えることができる。そこは明治では鍛えられる。単なるサッカーだけやっていると、そこだけの頭になってしまう、10人の選手がいたら、その中で自分をどうだしていくかは、強い個人じゃないけど、サッカー部分と、フィジカル部分と、頭の部分、心の部分は連動する。恵允(けいん)もそう」
高校まで選抜歴もなく無名の選手だったFW佐藤恵允を例に挙げた。大学で大きく成長し、U-22日本代表にも選手されるようになり、今夏にはドイツのブレーメンへと渡った。
■プラスアルファの作り方大事
ならば、サッカーの部分での成長を加速させる「人間性」を高めるポイントとは? そう問うと、こう説明してくれた。
「やはり考えさせること。答えを1から10まで言うと考えなくなる。その3から10を作り出せるとか、マニュアルからプラスアルファの部分をどう作り出すか。常にチャレンジさせていって習慣化させること。そうすると考えていくので、自分というものを切り刻んでいく。監督が言っていることは最低限やらなきゃいけないけど、プラスアルファの部分をどう出せるかというところは、差が出てくる。プラスアルファの作り方のメカニズム、というか頭の構図。明治の4年間ではそこに差が出てくる」
大手建設会社に長年勤務した経験を持ち、様々な視点からサッカー選手を輩出する指導者の言葉。「個々のうま味」を引き出すことに長けた”シェフ“のもと、学生フットボーラーたちは日々磨かれている。
■「後半につれての運動量」課題
そして、「味のあるプレー」を披露してくれた当の高足に話を聞いた。
まず、この日の試合についてたずねると「監督から1・5列目でキーマンになれと言われていました。相手のDFラインの間で動くのが得意ですし、攻撃面でそこで受けてチャンスになるというのは試合前からも想定していた。前半は結構、自分が関わって3人目の動きとかできたんですけど、後半につれての運動量という部分がまだ課題です」。
反省の弁も忘れない中、大学サッカーという環境が着実に自身の糧となっているようだ。
「明治に入ったのは、自分に足りない強度、球際、スピードという部分。一番成長できるなと思いました。試合よりも練習がきついし、求められることが多い。その分、一日一日を大切にしてやっています。その分、手応えというのは自分の中でもあります」
■DF間のギャップに入りかく乱
体の大きな相手と当たることで、入学当初は圧倒されることが多かったという。ただ、自らの特長をあらためて知るとともに、活かし方をつかみつつある。
「最初はみんな体も強いですし、ダメかなと思ったけど、実際にやってみたら、少し考えるだけでボールタッチとか何でもできますし。小ささは考える力を養うことで、今でも不利ではないですし、逆に大学は大きい選手が多いので、自分は逆に有利かなと思っています」
そこはDF間のギャップに入り、相手をかく乱するプレーを指している。さらにこう続けた。
「速い(展開の)中でも1個先、2個先、3個先を考える中で、自分の中ではやれてきたなと思います。大学入ってから考える力が自分の中で伸びて、本当にそういうプレーができているのかなと思います」
もちろんフィジカル面も鍛えつつ、それ以上にコンタクトを回避していく知恵の部分に磨きをかけている。
■「小柄な選手に勇気与えたい」
今季はトップチームの試合には1試合の出場と2試合にベンチ入りがあるだけ。レベルの高い上級生が揃う中、新人戦という場で地道にステップアップを図っているのが現状だ。それでも今夏にはU-20関東大学選抜にも名を連ね、小回りの利いたプレーでSBSカップ優勝に貢献している。
「高校の時から小さくてもきるんだぞというのをプレーで見せてきた。(体の)小さい選手たちがサッカーを続けられるように勇気を与えたいと思います」。自身も、前橋育英で全国選手権を制した166センチと小柄な飯島陸(甲府)の姿を見て「自分もやれるんだ」と思えたという。
158センチと言えば、Jリーグの北海道コンサドーレ札幌、川崎フロンターレでも活躍した「タイのメッシ」ことチャナティップと同じ。そのチャナティップは見る者にワクワク感を与える「おもちゃ箱」のようなプレーが人の心をわしづかみにした。高足にもそんなプレーができるかもしれない。
「山椒の実」が大学の4年間を経てどう成長するのか。「小さな頭の中に大きな知恵」を実践する若者の未来に期待したい。【佐藤隆志】










